2013年02月01日掲載 【ドーパミンが覚醒を誘導する回路を同定 ~睡眠と記憶の回路の分離~】

孵化が近い卵塊を保護するコブハサミムシ

睡眠と記憶には、密接な関係があります。覚醒時に学習したことは、その後の睡眠で記憶されるので、学習後に眠らないと、記憶の定着が悪くなります。ドーパミンという神経伝達物質は、睡眠と記憶の両方の制御に使われます。ショウジョウバエでは、特定のドーパミン神経を刺激することで、学習・記憶が成立することがわかっていました。今回、私たちは、覚醒を誘導するドーパミン神経回路を特定した結果、学習・記憶の回路と別であることがわかりました。

著者: 粂 和彦・上野太郎 (熊本大学発生医学研究所)

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2013年02月01日掲載 【ゴールで生活するアブラムシの快適な住まいづくり】

孵化が近い卵塊を保護するコブハサミムシ

「自分の住まいを快適で機能性のあるものに」。こう考えるのは、人間も昆虫も同じです。ある種の昆虫類は、ゴール(または虫こぶ)とよばれる、植物組織を異常に増殖または変形させた、巧妙な形をした巣をつくります。ゴールは、そのゴール形成者にとっての巣であるばかりではなく、豊富な栄養供給源でもあります。今回の研究では、ゴールのそれらの役割に加えて、昆虫が出す排泄物を除去する仕組み、つまりトイレ機能を備えたゴールが存在することを、アブラムシにおいて発見しました。

著者: 沓掛磨也子 (産業技術総合研究所)

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2012年12月30日掲載 【昆虫の変身を抑えるメカニズムの解明 ~優しい殺虫剤の開発に向けて~】

蛹になるために繭を作るカイコ

殺虫剤による害虫防除は、安定的な農作物の生産を可能にした一方、その使用を誤ると、環境汚染や人体への悪影響を引き起こす危険性があります。また、ミツバチのような受粉昆虫や害虫の天敵であるテントウムシなどの益虫も殺してしまう場合もあります。そのため、環境や人体にやさしく、受粉昆虫や天敵などの益虫をなるべく殺さない、害虫にだけ選択的に作用する殺虫剤の開発が求められています。私達は、このような条件を満たす殺虫剤を合理的に開発するために、脱皮・変態に関わる昆虫固有のホルモンである幼若ホルモンに着目しています。未だ明らかにされていない幼若ホルモンの分子機構を解明し、新たな殺虫剤の開発に貢献したいと考えています。

著者: 粥川琢巳・篠田徹郎 (農業生物資源研究所・昆虫成長制御研究ユニット)

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2012年12月28日掲載 【ショウジョウバエは栄養のことを考えて食べる】

ヒラタシデムシ成虫

生物は、エネルギー源としての炭水化物や脂質、体を構成するタンパク質など、様々な栄養物質を外界から摂取して生きていかなければなりません。しかも、暴飲暴食が体に良くないように、おいしいものを好きなだけ食べていてはだめで、各種栄養素を正しいバランスで摂食することが健康的な生活を送るには重要です。人間は栄養学の知識を学んで食事バランスを考えます。つまり、本能的に適切な食生活を送ることができないのです。だからこそ、「○○が健康に良い」という誤った情報にも踊らされるのでしょう。では、野生動物はどうでしょうか。私たちは、ショウジョウバエが不足した栄養素を補うように食の好みを変化させる能力を持っていることを明らかにしました(Toshima and Tanimura, 2012)。

著者: 利嶋奈緒子・谷村禎一 (九州大学大学院・理学研究院)

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2012年10月16日掲載 【カイコの変異体から分かったショウジョウバエの眼が黒くない理由】

赤卵変異体のカイコ成虫

昆虫の中でも、チョウやトンボなど、カラフルな種は一般の人にも人気がありますが、昆虫に色がつく仕組みについてはまだまだ不明な点が多く残されています。幅広い昆虫に存在する主要な色素の1つとして、アカトンボやドクチョウなどの赤い色で有名なオモクローム系色素が挙げられます。オモクローム系色素は、ショウジョウバエの赤い複眼など、ほとんどの昆虫の眼の色としても使われています。オモクローム系色素の合成経路については、ショウジョウバエの眼の色の変異体の研究から前半の部分についてのみ解明されていました。今回、筆者らは、カイコの眼と卵の色の変異体「赤卵」の原因遺伝子を探索し、その正体が、オモクローム系色素の合成の後半に働く新規なトランスポーター遺伝子であることを明らかにしました。

著者: 二橋美瑞子 (農業生物資源研究所)

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応用動物学/昆虫学最新トピック

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日本応用動物昆虫学会(応動昆)

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