2014年01月20日掲載 【コオロギから見た昆虫概日時計の多様性】

フタホシコオロギ成虫

体内時計(概日時計)はバクテリアからヒトまで進化的に保存されており、地球で生命活動を営む上で基盤となる重要な仕組みです。この時計を用いて、生物は環境の変化を予知することができます。多様な環境に適応して生息する昆虫では、時計も多様化が進んでいると考えられています。私たちは、昆虫体内時計の多様化の理解を目指して、コオロギの体内時計の仕組みの解析を進めています。

著者: 瓜生央大 (岡山大学大学院自然科学研究科)

本文を読む "コオロギから見た昆虫概日時計の多様性" »

2014年01月17日掲載 【イモムシ体表にスポット紋様が生じるメカニズムの解明】

キアゲハ幼虫

動物の体表には目玉のような模様がよく見られます。このような紋様の多くは捕食者に対するシグナルといわれていますが、その形成メカニズムの詳細は知られていませんでした。今回私たちは、カイコの突然変異体やキアゲハなどの幼虫を用いて、幼虫体表のスポット紋様が生じるメカニズムを解明しました1,2)

著者: 藤原晴彦 (東京大学・大学院新領域創成科学研究科・先端生命科学専攻)

本文を読む "イモムシ体表にスポット紋様が生じるメカニズムの解明" »

2014年01月01日掲載 【共生界の遺伝的フランケンシュタインモンスター】

ベータ細菌(緑)の中にガンマ共生細菌(オレンジ)が入り込んだ入れ子状共生系

農業害虫として悪名の高いミカンコナカイガラムシは、別種の細菌を内部に宿した細菌がさらに昆虫の細胞の中に入り込むマトリョーシカ人形のような入れ子状共生系を持っています。この共生系の進化には、これら3種の以外の生物も深く関わって来たことがゲノム解析により明らかになりました。

著者: 古賀隆一 (産業技術総合研究所)

本文を読む "共生界の遺伝的フランケンシュタインモンスター" »

2013年12月23日掲載 【「生物を生きたまま電子顕微鏡で高解像度観察する」~昆虫が分泌する物質を規範とした"防護服"ナノスーツの開発~】

ナノスーツをまとい、生きたままFE-SEMで撮影されたボウフラ

生物表面の微細構造の観察/解析には、走査型電子顕微鏡が有効な機器として用いられて来ました。しかし、高倍率・高分解能で表面微細構造を観察できる電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)では、試料を高真空環境(10-5~10-7Pa)に曝さなかえればならないので、生物が含む水分やガスなどが奪われて微細構造がたやすく変形してしまいます。そのため生物試料に様々な化学的前処理を施した後に予備乾燥したり、あるいは真空度を10-2Pa程度に下げた低真空SEMを用いるなど機器側の開発も行われたりしてきましたが、前者は微細構造が崩れ、後者は解像度が下がってしまうなどの問題が生じます。生物という濡れた試料を高倍率・高分解能観察することは困難で、ましてや生きたままの生物の観察は不可能だと考えられてきました。著者らは、その固定概念を払拭し生物がもつ真空耐性を増強する技術を検討し、虫(ショウジョウバエなど)の幼虫が体表にもつ粘性物質に、電子線またはプラズマ照射することで得られるナノ薄膜が、超高真空下でも体内の水分やガスの放出を抑制する表面保護効果を生みだすことを見いだし、生きたままのFE-SEM観察に適応することに成功しました(Takaku et al, 2013)。

著者: 高久康春 (浜松医科大学)

本文を読む "「生物を生きたまま電子顕微鏡で高解像度観察する」~昆虫が分泌する物質を規範とした"防護服"ナノスーツの開発~" »

2013年12月19日掲載 【GFPよりも使いやすい遺伝子組換えマーカーを目指して】

赤卵変異体のカイコ成虫

ショウジョウバエでは遺伝子組換え体を色や形などの見た目で判別できますが、他の昆虫では組換え体の判別はGFPなどの蛍光マーカーで行われています。しかし、蛍光マーカーを用いたスクリーニングは、蛍光顕微鏡が高価であることに加えて、実際やってみると大変骨の折れる作業であることをご存知の方もいるでしょう。

ショウジョウバエ以外の昆虫で遺伝子組換え実験をしている人は、ハエは肉眼で簡単にスクリーニングできるのでうらやましいと一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

今回私たちは、様々な昆虫に適用可能で、組換え体を見た目(色)で判別できるマーカーを作り出すことに成功しました。(Osanai-Futahashi et al. 2012)

著者: 二橋美瑞子 (農業生物資源研究所)

本文を読む "GFPよりも使いやすい遺伝子組換えマーカーを目指して" »

応用動物学/昆虫学最新トピック

プロの研究者でもまだ知らないような、出来たてホヤホヤの最新研究成果を分かりやすくお伝えします。

日本応用動物昆虫学会(応動昆)

「むしむしコラム・おーどーこん」は、日本応用動物昆虫学会電子広報委員会が管理・運営しています。