2012年10月09日掲載 【「赤とんぼ」が赤くなる仕組み】

ナツアカネ成熟♂

童謡「赤とんぼ」は、日本人なら誰でも口ずさめる歌の一つでしょう。空を群れ飛ぶ「赤とんぼ」は、秋の訪れをつげる風物詩としても日本人に親しまれてきました。「赤とんぼ」というと、一般的には秋によく見られるアキアカネなど、アカネ属に含まれるトンボを指すことが多いですが、夏によく見られる「ショウジョウトンボ」など赤いトンボ全般を含む場合もあります。赤くなるトンボの共通点としては、成虫が成熟するに伴って体色が黄色から赤色へと変化することが挙げられます(図1, 尾園・川島・二橋, 2012)。このような劇的な色の変化は、通常はオスにだけ見られ、メスは生涯黄色っぽい色をしていることが多いです。オスとメスの色の違いは、繁殖行動や縄張り活動の際に重要であると考えられています(二橋, 2010)。

著者: 二橋 亮 (産業技術総合研究所)

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2012年10月07日掲載 【たった1つの酵素のわずかな違いが、ショウジョウバエの生活史を変化させた】

パチアショウジョウバエ

地球上の生物の中には、特殊な環境に適応して独特の進化を遂げたものが多数存在します。しかし、それぞれの生物がこうした特殊な環境に適応するにあたってどのような遺伝子レベルの変化が必要であったのか、不明な点が多く残されています。本コラムでは、最近筆者たちが明らかにした、ショウジョウバエの食性の進化に関わる遺伝子の変化について紹介いたします。

著者: 丹羽隆介 (筑波大学 生命環境系/JSTさきがけ研究者)

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2012年08月09日掲載 【森と川をつなぐ細い糸】

ハリガネムシに寄生されていたカマドウマ(檀上幸子撮影)

森が育む陸生昆虫類は、渓流に棲むサケ科魚類の重要な餌資源となり、ひいては河川生態系全体に大きな影響を及ぼします。これまで、多くの研究が陸生昆虫類は川に「落下する」という暗黙の仮定をしてきました。様々な形態や行動様式をもつ陸生昆虫類は本当に、単純に川に落下しているのでしょうか? 私たちの研究から、寄生虫による宿主の行動操作が、森と川の生態系をつなぐ重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。

著者: 佐藤拓哉 (京都大学白眉センター)

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2012年06月27日掲載 【腸内細菌で殺虫剤に強くなる!?】

ホソヘリカメムシ成虫

これまでに500種類以上の害虫において殺虫剤抵抗性が報告されており、世界的にも大きな問題となっています。このような殺虫剤抵抗性は、従来「昆虫自身の遺伝子によって決まるもの」とごく当たり前のように考えられてきました。しかし、どうやらそうとも限らないようです。筆者らの最近の研究から、昆虫の体の中に棲む腸内共生細菌が殺虫剤抵抗性に大きく関わることが明らかになってきました。

著者: 菊池義智 (産総研北海道センター)

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2012年06月26日掲載 【昆虫の行動をあやつるウイルス: バキュロウイルスは宿主から獲得した遺伝子を改変して行動操作に利用していた!】

バキュロウイルスの一種

昆虫病理学の分野で有名な病原体の一つに、バキュロウイルスというウイルスがいます(図1)。このウイルスは、感染後に宿主幼虫の行動をあやつって高い場所へと移動させて殺し、死体をドロドロに溶かすという、SFさながらの恐ろしいウイルスなのです。最近の研究により、バキュロウイルスが宿主の行動を操作するメカニズムについて、非常に興味深い事実が明らかになってきましたので、ご紹介します。

著者: 國生龍平・勝間 進 (東京大学・大学院農学生命科学研究科)

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応用動物学/昆虫学最新トピック

プロの研究者でもまだ知らないような、出来たてホヤホヤの最新研究成果を分かりやすくお伝えします。

日本応用動物昆虫学会(応動昆)

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