2009年01月30日掲載 【アカリナリウムは用心棒を運ぶポケットだった!】

アカリナリウムの中のダニ

アトボシキタドロバチ(以下アトボシ)をはじめ、カリバチやハナバチの中にはアカリナリウムと呼ばれるダニポケット(体表面の窪み)を持つものがいます。なぜハチがこんなポケットを持つようになったかは、長らく生物界の謎でした。

アトボシのアカリナリウムを利用するダニが、ハチの巣の中でどんな生活をしているのか調べてみたところ、ダニはハチの幼虫の体液を吸う寄生者でした。どうしてアトボシは子供の血を吸う寄生生物を大事に(?)ポケットに入れて運ぶのか??

著者: 岡部貴美子・牧野俊一 (森林総研)

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2008年09月12日掲載 【トレハロース: 干からびたネムリユスリカ幼虫が蘇生する鍵分子】

『宇宙ユスリカ』の幼虫

乾燥に強い多くの昆虫はクチクラを厚くするなど身体から水分を失うことを回避していますが、ネムリユスリカは昆虫で唯一全く異なった戦略で乾燥ストレスに対応しています。すなわち身体が完全に干からびても死なない機構を獲得しているのです。

著者: 奥田 隆 (農業生物資源研究所・乾燥耐性研究ユニット)
URI: http://www.nias.affrc.go.jp/anhydrobiosis/Sleeping Chironimid/

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2008年04月15日掲載 【アゲハ幼虫の紋様の切り替えは幼若ホルモンによって制御されていた】

JH投与により斑紋が変化したアゲハ「終齢」幼虫

アゲハPapilio xuthusの幼虫を飼育された方も多いと思いますが、終齢になるときの劇的な紋様の変化には、目を見張るものがあります。若齢幼虫は鳥のフンに擬態し、終齢幼虫は周囲の食草に紛れ込む効果があると考えられています(図1)。このような現象について、小学生の頃から不思議に思われた方もいるのではないかと思いますが、その分子レベルでの実体は最近まで全く不明でした。その原因の一つには、紋様に関わる遺伝子がそもそも不明であったことが挙げられると思います。

著者: 二橋 亮 (農業生物資源研究所)

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2007年11月01日掲載 【チョウでみられる共生細菌が原因の性転換現象 〜昆虫の性決定メカニズムに迫れるか?〜】

吸蜜するキチョウ

キチョウ(Eurema hecabe)は、シロチョウ科に属しており、その名の通り翅が黄色い小型のチョウである。一見、同じシロチョウ科に属するモンキチョウと似ているが、筆者の多分に主観的な印象を述べさせていただくと、キチョウのほうが格段に上品で可憐である。水辺の近い少し開けた山地や住宅地などで、キチョウがひらひらと舞うように羽ばたいているのを、春から秋にかけて目にしたことがある人は多いと思う。実は、このキチョウは我々の目を和ませてくれるだけでなく、Wolbachiaという共生細菌に感染しており、昆虫の性決定や昆虫-微生物間相互作用という、興味深く、しかも重要な問題について取り組む材料を提供してくれているのだ。

著者: 成田聡子 (千葉大学園芸学部)

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2007年08月02日掲載 【利用できるエサ植物は腸内共生細菌で決まる】

卵塊を産むマルカメムシ

植食性昆虫がエサとして効率良く利用できる植物の範囲は限られており、その範囲は昆虫の種によって異なります。たとえば、モンシロチョウの幼虫は一部のアブラナ科植物だけ、モンキチョウの幼虫は一部のマメ科植物だけ、といった具合です。これまでは各昆虫の植物利用能力はそれぞれの昆虫自身がもつ遺伝子型によって決まっていると考えられていました。しかし最近、昆虫の体内に共生する微生物の遺伝子型も重要であることがわかってきました。ここではマルカメムシ類と腸内共生細菌の研究例を紹介します。

著者: 細川貴弘・深津武馬 (産業総合研究所・生物機能工学)

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応用動物学/昆虫学最新トピック

プロの研究者でもまだ知らないような、出来たてホヤホヤの最新研究成果を分かりやすくお伝えします。

日本応用動物昆虫学会(応動昆)

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