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2009年06月05日掲載 【蛾の密やかなラブソング: 鱗粉による超音波の発生と交尾行動における機能】

アワノメイガの配偶行動

秋の夜長に鳴く虫と同じように、蛾の仲間にも音により雌雄で交信をするものがいます。私たちは、ある種の蛾のオスがきわめて微弱な超音波を用いてラブソングを歌うことを発見しました。この歌は、オスが前翅と胸部にある特殊な鱗粉をこすり合わすことで生じ、メスが交尾を受け入れる際に重要な役割を果たしています。微弱な超音波の利用は、メスをめぐる競争相手のオスや天敵による盗聴を避けるのに有効と考えられ、今回初めて明らかになりました。今後は同様の現象が多くの昆虫や動物で見つかっていくものと期待されます。

著者: 中野 亮(東京大学大学院農学生命科学研究科)・高梨琢磨(森林総合研究所)

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2008年11月21日掲載 【昆虫を扱う職業: ズバリ的中!? 病害虫が発生する時期や量を予測します】

捕虫網を使ってカメムシ類のすくい取り調査をしている筆者

農作物には、いろいろな種類の病気や害虫が発生します。これらの病害虫が、いつごろどの程度発生するのか事前に予測することを病害虫の「発生予察」と言います。国と都道府県は、植物防疫法という法律で、「発生予察事業」を行うように定められています。発生予察事業は、ウンカ類の大発生をきっかけに、1941年に水稲を対象としてスタートしました。その後、麦、大豆、果樹、野菜、花き等が対象作物に加わり、この事業は、定められた基準・方法に従って全国で実施されています。

著者: 菖蒲信一郎(佐賀県農業技術防除センター)

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2008年09月09日掲載 【昆虫を扱う職業: 思わぬ知識が役に立つ!? 現場密着型の農業改良普及員】

ほうれんそうのハウスをみんなで見学

「農業改良普及員」という職種をご存じでしょうか。地域の農業が抱える課題を解決し、より良い方向に誘導するべく、農業に関する技術や情報、各種制度や法律をもって現場に出向く技術者です。農業者の相談窓口であり、現場に密着しつつ、都道府県や市町村、農協等の各種団体とも関わりのあるこの業界。もしここに、多少なりとも「虫」との付き合いのある人材が入ったら...?

今回は筆者の体験をもとに、農業改良普及員の業務について紹介します。

著者: 後藤純子(二戸農業改良普及センター)

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2008年09月05日掲載 【渡る世間はメスばかり? 宿主のオスだけを殺す共生細菌】

オス殺し共生細菌に感染したショウジョウバエのメスがうんだ子孫(メスしかいない)

昆虫にはオスとメスが存在します。多くの場合、その比率はおよそ1:1です。ところがそのような昆虫種において、メスばかりうまれる系統が見つかることがあります。このような現象は、染色体の異常などが原因で起こることもありますが、驚くべきことに、昆虫体内の共生細菌が宿主の生殖を操っているケースが多いのです。共生細菌による宿主の生殖操作は、これまでに多様な昆虫種から報告されており、その原因となる共生細菌もさまざまですが、今回はその一例として、ショウジョウバエの共生細菌であるスピロプラズマが引き起こす性比異常現象について紹介したいと思います。

著者: 安佛尚志・深津武馬(産業技術総合研究所・生物機能工学)

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2008年06月09日掲載 【植物のかおりで夜を判断】

アワヨトウ幼虫

どのようにして、昼と夜を区別していますか?夏至に近づくにつれて「日が長くなったなあ」とか、秋になると「あっという間に日が暮れるなあ」という感覚をお持ちだと思います。

その昼夜は何によって感じていますか?おそらくほとんどの人の答えは光でしょう。しかし、別のものによって昼夜を区別している虫がいます。今回のむしむしコラムはそんな虫のお話です。

著者: 塩尻かおり(京都大学生態学研究センター)

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2008年02月14日掲載 【ハダニが増えるとやって来る天敵ケシハネカクシ】

ケシハネカクシ成虫

ガーデニングや家庭菜園などを行っていると、赤や緑の小さなハダニが植物上にたくさん発生し、被害に悩まされることがあります。実は、ハダニは農家の方々も防除に苦労する農業害虫ですが、幸いにも、ケシハネカクシという天敵昆虫の働きによって被害が抑えられることがあります。

彼らはハダニがたくさん発生した作物上に突如あらわれ、短期間に大半のハダニを食い尽くし、その後どこかに飛び去ってしまいます。どこから来て、どこに行くのでしょう?また、ハダニの居場所がなぜ分かるのでしょう?

最近の研究成果を紹介し、これらの疑問について考えてみましょう。

著者: 下田武志(中央農業総合研究センター)

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2007年12月21日掲載 【兵隊アブラムシの攻撃毒プロテアーゼ】

「社会性昆虫」というとすぐにアリやハチが思い浮かびますが、植物の害虫として悪名高いアブラムシ(アリマキ)に社会性の種類がいることは、あまり知られていないのではないでしょうか。アブラムシの社会には、子を産むことができる普通の虫と、子を産むことなく自分の仲間を守るために外敵と戦う兵隊幼虫という2種類の階級がコロニー内に存在します。このコラムでは、ハクウンボクハナフシアブラムシの兵隊幼虫から見つかった攻撃毒プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)について紹介します。

著者: 沓掛磨也子(産業総合研究所・生物機能工学)

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2007年11月02日掲載 【ホソヘリカメムシのプロバイオティクス】

ホソヘリカメムシの盲嚢器官

ヨーグルトを食べて生きたビフィズス菌を体内に取り込むと、体内環境が改善されて免疫力がアップ、花粉症やメタボリック症候群の予防にもなります----こんな話を最近よく耳にしませんか?人がヨーグルトを食べてビフィズス菌を取り込むように虫も有用な細菌を外から体内に取り入れて、これらを巧みに利用していることが最近の研究から分かってきました。ここでは、ホソヘリカメムシの腸内共生細菌について少しお話ししたいと思います。

著者: 菊池義智(産業総合研究所・生物機能工学)

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2007年11月01日掲載 【蛾の「雄らしさ」を作るZ染色体】

正常翅と痕跡翅のカイコ

カイコをはじめとする蛾や蝶の類は、n=30種類ほどの染色体を持っており、そのうち1つがZ染色体です。Z染色体は、雄では細胞あたり2本、雌では1本存在します。このZ染色体の上に存在する遺伝子は、他の染色体(常染色体)とは異なり、神経や筋肉で働く遺伝子が多いことが分かっています。蛾類の行動は雌雄で大きく異なっていますが、その性差にはZ染色体の機能が関与している可能性があります。

著者: 嶋田 透・藤井 告(東京大学大学院農学生命科学研究科 昆虫遺伝研究室)

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2007年11月01日掲載 【昆虫を扱う職業: ある昆虫担当学芸員の話】

リニューアルされた昆虫の展示室

博物館などで研究や展示などの専門的な仕事をする人がいます。主に学芸員と呼ばれている職種の人たちで、昆虫を扱っている博物館には昆虫担当の学芸員がいます。私がこの職業を知ったのは高校2年生の時のことです。隣町にある倉敷市立自然史博物館を訪れて、たくさんの昆虫標本の展示を見たり、昆虫担当の先生のお話を聞いたりしているうちに、昆虫が好きだった私は、「昆虫に囲まれて仕事ができるなんて素敵な職業だなあ」とあこがれのようなものを感じていました。そして、6年後、奇遇にも私はその倉敷市立自然史博物館で昆虫担当の学芸員として働くことになったのです。それまでのいきさつと博物館での仕事の概要をご紹介させていただきます。

著者: 奥島雄一 (倉敷市立自然史博物館)
URI: http://www.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/

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2007年08月02日掲載 【マルカメムシの共生細菌カプセル】

カプセルを吸うマルカメムシの孵化幼虫

マルカメムシは空き地などにはえているクズの茎にものすごい数でついている虫です。洗濯物にもよくついている虫です。また、手ではたくとすごく臭い匂いを出す虫です。マルカメムシという名を聞いたことがない読者の方でもここまで読んで、あれのことか、と思われたのではないでしょうか。極めて普通種で身近な虫なのですが、実は多くの読者の方がまだ聞いたことがないであろう非常におもしろい現象が見られます。

著者: 細川貴弘・深津武馬(産業総合研究所・生物機能工学)

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2007年05月10日掲載 【ダンゴムシはジグザグが好き!】

オカダンゴムシ

軒下に置いてある植木鉢を持ち上げると、鉢の下からころころと転がりでるダンゴムシを見かけることがあります。正式にはオカダンゴムシという生き物です。足の数や胸と腹の区別がないことからもわかるように、昆虫ではなく、エビやカニなどとともに節足動物門甲殻綱に分類されています。

この生き物がたいへん面白い行動をすることが知られています。どなたでも観察できるちょっと不思議な楽しい行動をご紹介しましょう。

著者: 小野知洋 (金城学院大学)

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2007年03月27日掲載 【ダニを巣に運ぶアトボシキタドロバチ】

アトボシキタドロバチ

アトボシキタドロバチは東~北日本に分布する小型のドロバチです。このハチの約9割は、卵の時からずっと『アトボシキタドロバチヤドリコナダニ』と暮らしています。成虫になったハチの体には、図に緑の円で示た場所(両翅のつけ根の後方や一番目の腹節の下)などに窪み(ダニポケット=アカリナリウム)があります。ハチが成虫になる(羽化する)時に、ダニはこのアカリナリウムに殺到し、合計100頭を超えるダニがこの中に入します。そしてメスバチが新しい巣を作る時、アカリナリウムから出て巣に入ってゆくのです。

著者: 岡部貴美子・牧野俊一(森林総研)

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2007年03月27日掲載 【チョウの訪花学習性】

花を訪れるモンシロチョウ

「チョウ」というと、ヒラヒラ花から花へ、天真爛漫、何も考えず気ままに飛んでいるというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実は違います。彼女らは大変(それなりに?)頭がいいのです。今回はそんな彼女らの訪花学習性について、最近の研究を紹介しようと思います。

著者: 香取郁夫・山木貴史 (近畿大学農学部)・奥山清市・坂本 昇 (伊丹市昆虫館)

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2007年03月27日掲載 【ヒメハナカメムシ(天敵)によるアザミウマ(害虫)の防除】

アザミウマを捕食するヒメハナカメムシ

岡山県北部には、アザミの花を手の中で転がし、「牛出ぇ、馬出ぇ、飛行機出ぇ」と歌いながら花の中から這い出してくる虫を、牛や馬や飛行機に例える遊び歌が伝わっています。

アザミの代わりにシロツメクサを使っても、花の中に潜んでいるアザミウマ類(図1)やアザミウマ類の天敵であるヒメハナカメムシ類(図2)などが出てきます。そして、この中に害虫防除のヒントも隠れていました。

著者: 永井一哉(岡山県農業総合センター農業試験場)

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2007年03月27日掲載 【虫媒性ウイルスの巧妙な手口】

トスポウイルス感染による病害

ウイルスに感染して病気になるのはヒトなどの動物だけではありません。植物も感染し、野菜や花などの農産物に壊滅的な被害が生じることもあります。昆虫やダニの仲間にはこうした植物ウイルスを媒介する種類がいます。今回は、ベクター(媒介昆虫)を巧妙に操作する植物ウイルスの生き残り戦略についてご紹介します。

著者: 櫻井民人(東北農業研究センター)

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2007年03月27日掲載 【吸汁によって植物を激しく萎縮させるヨコバイ】

フタテンチビヨコバイ

農作物の栽培方法の変化や温暖化の影響などによって,これまで害虫ではなかった虫が,新しく害虫化するものがあります。フタテンチビヨコバイは,最近,飼料用トウモロコシの成長を止めてしまう「ワラビー萎縮症」と呼ばれる被害を起こして問題になっています。ここでは,この虫のおもしろい生態を紹介します。

著者: 松村正哉(九州沖縄農業研究センター)

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2007年03月27日掲載 【福建省タケ害虫問題の顛末】

ナンキンスゴモリハダニ

モウソウチク(孟宗竹)はササ・タケの中でも最大のタケで、稈の直径が30cm、高さが25mに達することもあります。原産地は中国の福建省だといわれていますが、日本にも江戸時代に薩摩の殿様が輸入し、いまは本州以南で広く栽培されています。タケノコが美味しく、また管理された竹林の美しさから、ほとんどの人は、このモウソウチクが日本古来のものだと思っているようです。ここでは、このモウソウチクに大発生したハダニにまつわる話を紹介することにしましょう。

著者: 斉藤 裕(北海道大学農学部)

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2007年03月27日掲載 【カシノナガキクイムシ】

カシナガキクイムシ雌雄

「キクイムシ」には、その名の通り木を食べる種類の他に、木の中に餌となる菌類を持ち込んで栽培する種類がいます。このような農業を営むキクイムシの一種が樹木の幹に孔をあけ、次々に枯死させる被害が全国各地で拡がっています。今回は、この奇妙な現象を紹介しようと思います。

著者: 小林正秀(京都府林業試験場)

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2007年03月27日掲載 【社会性昆虫の卵保護行動を介した生物間相互作用】

シロアリの卵に擬態する菌核菌「ターマイトボール」

親が自分たちの子を認識し、世話をすることは、あらゆる社会性生物にとって社会の基礎となる重要な行動です。カッコウの托卵で知られるように、擬人的に言えば親から子への無償の愛を巧妙に利用する生物がいます。アリやシロアリの職蟻は、女王の産んだ卵を育室で大切に世話をします。ここで「シロアリの卵に擬態する菌類」と「巨大アブラムシの卵を保護するアリ」の話を紹介します。

著者: 松浦健二(岡山大学大学院環境学研究科)
URI: http://www.agr.okayama-u.ac.jp/LIPM/

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2007年03月27日掲載 【イモムシの唾液?】

 

以前、TVドラマで竹内結子演じる大学院生が「アブラムシに襲われた植物が匂いを出すと、天敵のテントウムシが植物を助けにくる」というテーマで論文を書いたところ、指導教官が「そんな都合のいい話があるか」と一蹴する......そんな場面がありました。実はそんな都合のいい話が、芋虫と植物と寄生蜂の間に発見されてから、かれこれ10年以上経っています。

著者: 吉永直子・森 直樹(京都大学大学院農学研究科)

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応用動物学/応用昆虫学コラム

応用動物学/応用昆虫学の分野でいま注目されている研究成果を、第一線で活躍している研究者が解説します。

日本応用動物昆虫学会(応動昆)

「むしむしコラム・おーどーこん」は、日本応用動物昆虫学会電子広報委員会が管理・運営しています。