2014年01月01日掲載 【農耕地の周辺環境: 露地栽培で土着天敵を利用するときに考慮すべきこと】

ヒメカメノコテントウ

国土面積の多くを占める中山間地では農林業が重要な産業です。中山間地の農耕地周辺には森林や草地などの自然もしくは半自然植生(以下、周辺林野)が広大に広がります。こうした周辺林野は、隠れ家や餌を提供することにより害虫の天敵を維持しています。そうすることで、天敵を一時的に農耕地へ供給し、結果として農耕地で発生する害虫の抑制に役立っていることが、これまでの研究から明らかになっています。このような土着天敵による病害虫被害の軽減は、われわれ人間が知らないうちに多様な生物から受けている恩恵でもあります(生態系サービスとよばれる自然の恵みのひとつ:病害虫制御サービス)。周辺林野が持つこうした機能を上手に活用することで、環境に負荷の少ない農業を持続的に行うことができるかもしれません。

著者: 滝 久智 (森林総合研究所 森林昆虫研究領域)

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2013年12月24日掲載 【近親交配を好む虫と避ける虫】

交尾するイモゾウムシ

近親者と交尾すること(近親交配)は避けるべきだと一般に考えられています。これは近親交配によって生まれてきた子にはしばしば有害な影響(近交弱勢)が見られるためです。しかし、近親者は自分と同じ遺伝子を持っている可能性が高いため、遺伝子の伝搬効率という観点からはむしろ近親交配は有利となり得ます。ここでは、近親交配を避けるか受け入れるかという観点から、昆虫の行動を紹介します。

著者: 栗和田 隆 (鹿児島大学教育学部)

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2013年12月23日掲載 【研究室紹介: 京都大学大学院 人間・環境学研究科 市岡研究室】

アリ植物の1種Macaranga rufescensの新葉に集まる共生アリCrematogaster sp.4と、シジミチョウArhopala dajagakaの幼虫

市岡研究室では、東南アジアの熱帯雨林に生息する昆虫の生態や生物間相互作用の解明を目指した研究を行っています。アリやチョウの多様性と生態、林冠部に生息する昆虫群集の構造、数年に一度様々な分類群の樹種が同調して開花・結実する「一斉開花」と植食性昆虫の群集動態との関係、キノコの分布とキノコ食昆虫の群集構造の関係などがこれまでに扱ってきた題材です。ここでは、アリと緊密な共生関係をもつ「アリ植物」とさまざまな生物との間の相互作用についての研究の一部を紹介します。

著者: 清水加耶 (京都大学大学院人間環境学研究科)

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2013年12月23日掲載 【虫で虫を滅ぼす方法: 不妊虫放飼法による害虫の根絶】

交尾するイモゾウムシ

最近、サツマイモ害虫であるアリモドキゾウムシが、不妊虫放飼法と呼ばれる防除法により沖縄県久米島で根絶されました。離島とはいえ比較的広い島(60 km2)で、どのように害虫を根絶したのか疑問に持たれた方もおられるでしょう。ただ、ゾウムシの根絶を語るには、このコラムではあまりにもスペースが限られています。血と汗と涙のアリモドキゾウムシ根絶ドラマは他に譲ることとし、ここでは不妊虫放飼法で核となる不妊化にまつわる話題を紹介したいと思います。

著者: 熊野了州 (沖縄県病害虫防除技術センター・琉球産経株式会社・琉球大学農学部)

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2013年10月30日掲載 【ベニシジミのメスのセクシャルハラスメント回避行動】

ベニシジミ成虫

セクシャルハラスメントは人間だけのものではありません。逃げ回るメスに対してオスがしつこく求愛するという光景は、非常に多くの動物で見ることができます。オスから執拗に交尾を迫られると、メスは怪我をしたり求愛を逃れようとして天敵に見つかりやすくなったりすることがあります。それほどひどくなくても、餌をとったり産卵したりするところをオスの求愛によって邪魔されるのは甚だ迷惑な話です。しかし、メスの方も被害を受けているばかりではありません。実はセクハラへの対策を進化させているのです。

著者: 井出純哉 (久留米工業大学)

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応用動物学/応用昆虫学コラム

応用動物学/応用昆虫学の分野でいま注目されている研究成果を、第一線で活躍している研究者が解説します。

日本応用動物昆虫学会(応動昆)

「むしむしコラム・おーどーこん」は、日本応用動物昆虫学会電子広報委員会が管理・運営しています。