2007年05月09日掲載 【ダンゴムシの交替性転向反応】
オカダンゴムシには、turn alternationという行動が見られるそうなのですが、それに関する文献などありましたら、紹介いただけないでしょうか?
また、このようなturn alternationのような行動選択を行う昆虫はオカダンゴムシ以外にも存在するのでしょうか?
ご質問にお答えします。オカダンゴムシのturn alternation(交替性転向反応)については、随分古くから研究があり、わが国では1950年代に岡山大学のグループ(渡辺氏、岩田氏)が精力的に研究を発表しておられます。他方、海外でもダンゴムシではありませんがワラジムシの仲間に関する関連研究があり、特に、ニュージーランドのHughesは一連の研究報告、総説などを発表しています。
現在、この行動のメカニズムとしてよく紹介されているBALM説(Bilaterally Asymmetrical Leg Movement)はHughesによって提案されたものです。わが国でも、近年この行動に関する新たな視点からの研究がなされており、はこだて未来大の森山氏と滋賀大の右田氏の認知科学的解析、京大の佐久間氏のグループによるサーボスフェアを用いた行動機構の解析、私達の行動生態学的分析などが報告されています。これらの文献については、拙著の引用文献をご参考になさってください。
交替性転向反応を示す昆虫はかなり多いようで、上記の文献によれば、アリ、ゴキブリなどに関する報告があるということです。また、高知大学の種田氏によるハサミムシの研究も知られています。さらに、文献によれば、ゾウリムシからヒトに至るさまざまな動物グループでこのような反応があるといわれています。
参考文献
- 小野知洋 (2004) 化学と生物 42(11): 733-738.
- 小野知洋, 高木百合香 (2006) 日本応用動物昆虫学会誌 50(4): 325-330
- 町田吉彦編著 (2001) 高知新聞社「生物の世界と土佐の自然」