2007年03月27日掲載 【昆虫にも血液はあるの?】

昆虫のからだを傷つけると、透明な液が出てきました。
人間の血液のように赤くないのですが、これはやはり血液ですか。

はい、これは昆虫の血液です。

人間の場合、血管内にある赤い血液と血管外にある透明なリンパ液、組織液とを区別しています。

一方、昆虫の循環器系は開放血管系といい、閉じた血管系をもたないので、血液 とリンパ液、組織液の区別はなく、正式には「血リンパ」と呼んでいます。

人間の血液は肺と組織の間で酸素を運搬するヘモグロビンという赤いタンパク質を含むために赤く見えます。しかし、昆虫では私たちの血管のように気管が全身に張りめぐらされていて、それが直接酸素をさまざまな組織に供給するために、一般にヘモグロビンのような酸素を運搬するタンパク質は血リンパに含まれていません。

したがって昆虫の血リンパは、透明またはうすい黄色や緑色をしているのがふつうです。もっとも、昆虫でもユスリカの幼虫(赤虫といって釣りの餌として使われている)の血リンパは、ヘモグロビンを含んでおり赤い色をしています。このヘモグロビンは酸素を運搬するためではなく、むしろ酸素の欠乏する汚い水にすんでいるユスリカの幼虫がからだの中に酸素を蓄えておくためのようです。

回答者: 沼田英治 (大阪市立大学理学部)

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