2015年04月10日掲載 【研究室紹介: 宇都宮大学大学院農学研究科・応用昆虫学研究室】

私たちの研究室は主にアブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの微小害虫やアブラムシに寄生する寄生蜂の生態学的形質を調査しています。また、最近では東アジアで初めて発見されたアブラムシ内部寄生性のタマバエやセイヨウミツバチなども研究テーマとして加わりました。

写真1: ダイズの茎を吸汁するダイズアブラムシ
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微小害虫や天敵の生態学的な調査を行う場合は、室内での累代飼育系が重要となってきます。しかし、従来の飼育方法では非常に手間がかかり、広いスペースを必要とするため、一度に多くの系統を維持することができませんでした。しかし、本研究室ではマメ科植物の実生苗を用いたクローン別飼育法や水耕栽培による餌植物の供給システムが確立されており、多くの系統の微小害虫の累代飼育を行っています。

具体的な研究内容としては、アブラムシ類やアザミウマ類、アブラバチの生態学的調査を主に行っており、寄生蜂が産卵後にアブラムシの行動を操るといった現象を明らかにしました。他にもタバココナジラミの媒介するTYLCV(Tomato yellow leaf curl virus)の媒介メカニズムやミツバチに寄生するダニの飼育法、炭酸ガスを用いた殺虫技術などがあります。また、研究室には行動解析装置が揃っており、アザミウマ類の行動を解析するEthovisiono装置やEPGと呼ばれる装置で、害虫が植物に口針を挿入するといった吸汁パターンを読み取り、植物の品種間の耐虫性を評価するといった研究も行っています。

写真2: 微小昆虫の累代飼育の様子
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このように生態を調査するといっても多くのアプローチがあります。そのため、今では分子生物学的な研究を行っていた人や化学専攻の人なども訪れ、学生同士の化学反応が起き、全く新しい視点での研究を行うことができます。

研究室の雰囲気は比較的自由で、配属する前からやってみたいテーマがある人は担当教員と相談しながら検討し、研究することも可能です。また、やる気のある学生には海外研修や学会発表、研究機関での研修など活躍の場を与えてくれます。

研究以外にも、空いた圃場を利用し、委託試験等の害虫の調査をするためにジャガイモや夏野菜、イチゴ、リンゴ、ブドウ、など数多くの作物を栽培しています。緑豊かな大学構内で新種の発見もあるかもしれません。是非,興味がある方は一度遊びに来てください。

著者: 稲川光一 (宇都宮大学大学院農学研究科)
URI: http://shigen.mine.utsunomiya-u.ac.jp/oukon/

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