2007年03月27日掲載 【ハチに刺されたら?】

ハチに刺されたらどうしたらいいのでしょう?
ハチの巣を見つけました。どうしたらいいでしょう?
ハチに2回刺されたら死んでしまうって本当ですか?

まとめて答えます。

ハチにされたら、まず水で冷やします。軽い症状の場合は市販のステロイド軟膏を塗って、痛みが去るのを待ちます。毒を血液と一緒にしぼり出すのも有効です。ひどい症状の場合は、やはりお医者さんに行くほうがいいでしょう。

昔は、ハチに刺されたらアンモニア水をかければいいと言っていました。これは、ハチの毒が酸だと思われていたので、アルカリ性のアンモニアで中和すればいい、ということだったようです。でも、ハチの毒はタンパク質なので、これは間違いだったのです。

おしっこをかければいい、と言う人もいますが、これは二重に間違っています。まず、出したばかりのおしっこにはアンモニアは入っていません。おしっこが空気に触れるとだんだんアンモニアが生成されてきて、臭い便所の匂いになりますが、そんなのをハチ刺されに塗りたいとは思いませんよね。つぎに、さきほど述べたように、アンモニアはそもそもハチ刺されに効かない、のです。

ハチに刺された人はたいがい、ハチが突然襲ってきた、と言いますが、意味もなくハチは襲ってきたりはしません。ハチにとっての防衛圏に人間が入ってきたときにハチは襲うのです。野外でハチの巣の近くを通ると、ハチはまず警戒飛行をします。カチカチと音を立てるハチすらいます。このときに人間のほうが気づいて、その防衛圏から立ち去れば、お互いに不幸な目に遭わずにすみます。ハチは黒いものや、急に動くものが嫌いです(たぶん、クマに巣を襲われたりするから、そのように進化してきたのでしょう)。ですから、ハチの巣の近くで黒い服を着て歩いたり、急に手足を振り回したりするのは、危険な、挑発的行為です。こちらが運悪くハチに気づかずに、1匹に刺されてしまっても、まずは冷静に(難しいですが)、その場所からゆっくりと立ち去ることをお勧めします。そうしないと警戒中のハチが警報フェロモンを出し、巣全体を興奮させてしまいます。秋の遠足で子供たちがハチの大群に刺された、などというのは、これらの注意事項をすべて破ってしまった、不幸な事例です。

ハチの巣の処理のしかたですが、アシナガバチなどでまだ巣が小さく、女王しかいない頃なら、市販のスプレー式殺虫剤をかけるだけで十分です。ハチは昼行性なので、夜にかけるほうがいいでしょう。殺虫剤をかけて、ハチが弱って地面に落ちたら、ゴキブリを潰すように新聞紙などで殺してしまいます。ピレスロイド形殺虫剤ではかけ方が弱いと、いちど昏倒した虫が生き返ってしまうことがありますので。でも、十分注意して、処理してくださいね。また、「モンスズメバチ」は夜間も活動しますので、気をつけてください。

ハチの巣が大きくなっていたり、巣の主がオオスズメバチなどの大型種の場合には、やはり専門の業者にまかせたり、役場の担当に連絡することをお勧めします。

なお、家の壁に泥で巣を作ったり、すだれなどの竹や葦の穴に巣を作ったりする小型種のハチは、こちらからよほどいたずらを仕掛けないかぎり、刺してくることはありません。巣作りというハチの「母性本能」にきっと感心されると思いますので、観察するのも面白いのではと思います。

ハチに2回刺されたら死んでしまう人は、確かにいます。アレルギー体質の人ですと、以前にハチに刺されたときに免疫ができて、ハチ毒に対してきわめて敏感になり、2度目以降に刺されたときに全身症状を示すことがあります。これをアナフィラキシーショックといい、すぐに病院に搬送しないとショック死してしまうことがあります。日本では、クマに襲われて死ぬ人は年に5人もいないと思いますが、ハチに襲われて亡くなる方は年に100人近くいます。日本で最も恐ろしい動物はハチである、という言いかたはあながち嘘ではないのです。ハチに接する機会が多くて、自分がそういうタイプかどうか心配な方は、大病院などの皮膚科の専門医に相談されるとよいでしょう。

回答者: 榊原充隆(東北農研)

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