2010年12月01日掲載 【昆虫の雨の日の行動について】

昆虫が雨に濡れるのを嫌う理由は何ですか? 羽根がぬれると飛びにくいからですか?

気象学では、水滴の直径が0.5mm以上の降水を雨といいます。普通に観察される雨粒の最大直径は2~3mm。落下速度は雨粒の直径によって変わりますが、直径1mmの雨粒では毎秒4mになるそうです。いま、直径2mmの雨粒が毎秒4mの速度でぶつかったときの衝撃を考えてみましょう。直径2mmの球体の体積は、4Πr3/3の式より約4 mm3=4×10-3 cm3。水の比重1g/cm3を掛けると、雨粒の重さはおよそ4×10-3 g=4mgです。mΔv=FΔtの式から衝撃荷重Fを求めましょう。雨粒の重量m=4×10-6 kg、速度変化Δv=4m/s、衝突時間(雨粒の直径を速度で割った値)Δt=(2×10-3)/4=5×10-4sを代入すると、F=32×10-3 kg・m/s2 [N]=3.2g重となります。つまり、この雨粒が1粒がぶつかると、0.5msの衝突時間で3.2gの重さを感じることになります。

飛ぶ昆虫は体がたいへん軽く、ミツバチは80mg、モンシロチョウは100mg、カはわずか3mgしかありません。体の小さな昆虫にとって、雨粒がぶつかったときの衝撃は相当な大きさですから、雨中を飛ぶのはたいへん危険と考えられます。

また、雨に濡れると水滴がついて体が重くなります。体の軽い昆虫にとって水滴は無視できない重さとなり、運動のためにより多くのエネルギーが必要です。さらに、気温が下がる、水が蒸発して熱を奪うなどの影響で、昆虫の体温も低下します。彼らがいつもと同じように動くには、体温を上げるためのエネルギーも必要です。

以上のような理由から、多くの昆虫にとって、雨の日は動かずじっとして省エネに徹したほうが都合がよいのです。

回答者: 大村 尚 (広島大・院・生物圏)

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