2007年05月30日掲載 【エイリアンもびっくり、不思議なセンチュウがスズメバチから見つかる】
エイリアンという映画をご存じだろうか。シガニーウィーバー主演で話題となったSF映画であり、あたかもシロアリを連想させるような、不気味なエイリアンが人類を襲うというものである。特にマザーと呼ばれるエイリアンの母親はすさまじく、巨大に肥大した腹部から次々にエイリアンの卵を産んでいる姿は、おぞましいものであった。女王の腹部が巨大化するのはシロアリでは有名であるが、最近の研究により、さらにすさまじい例がスズメバチに寄生するセンチュウでみつかった。
ことの起こりは、スズメバチの生態調査で春先のスズメバチを調べていたところ越冬あけの女王蜂の腹部に異常なものが見つかったことによる(写真1)。

写真1: キイロスズメバチの越冬明け女王(スケールは1cm)。赤丸の部分に線虫がいる。
これは、腹部にぎっしりとつまった卵のように見えたが、何であるかわからなかった(写真2)。幸い、センチュウの専門家が身近にいたこともあり、調べてもらったところ、これは寄生性のセンチュウ(Sphaerularia sp.)であり、卵のように詰まって見えたのは、センチュウの生殖器官が千倍ほどにも肥大した物であることがわかったのである。また、寄生された女王の卵巣は発達していなかった。これまで、マルハナバチ類からは同様なセンチュウが見つかっていたが、スズメバチ属から見つかったのは世界的にも初めてである。無敵を誇っていたスズメバチにもエイリアンもびっくりの意外な強敵が潜んでいたのである。
この発見は、独立行政法人森林総合研究所北海道支所のハチの専門家・佐山勝彦とセンチュウの専門家・小坂 肇および森林総合研究所森林昆虫研究領域長の牧野俊一によるものである。
詳細は下記参考文献か、あるいは詳細記事へのリンクを参照いただきたい。
撮影者
- 写真1: 牧野俊一
- 写真2: 小坂 肇
- 写真3: 佐山勝彦
参考文献(写真2出典含む)
- Sayama, K., Kosaka, H., Makino, S. (2007) The first record of infection and sterilization by the nematode Sphaerularia in hornets (Hymenoptera, Vespidae, Vespa). Insectes Sociaux 54(1): 53-55.