2013年06月10日掲載 【冬の寒さが冬尺蛾の種分化を引き起こす】

クロテンフユシャクの交尾。上がメスで下がオス

新しい生物種が誕生するプロセスを種分化と言います。種分化の過程で重要なことは、それまで互いに繁殖できていたもの同士が「空間的」に出会わなくなることだとされてきました。しかし、理論的には「時間的」に出会わなくなることによっても種分化は生じるはずです。私たちはクロテンフユシャクという蛾において冬の寒さによって繁殖時期が分離し、時間的な種分化が起こっていることを明らかにしました。

著者: 山本哲史 (京都大学)

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2013年06月10日掲載 【サイカチマメゾウムシ幼虫がもつ新規抗酸化脂質】

サイカチマメゾウムシ成虫

活性酸素種(ROS)の過剰発生によって、生体を構成するタンパク、核酸および脂質などが多大な損傷を受ける恐れがあります。酸素呼吸を行う生物は、常にこのような酸化ストレスにさらされる危険性を有していることから、生体防御のためにSODやチオレドキシンなどの抗酸化性酵素、あるいはビタミンCおよびE、カロテノイド類、ポリフェノール類などの有機物質を利用していることが知られています。最近、マメ科の種子中で成長するマメゾウムシ幼虫がこれまで知られていない抗酸化脂質を作り出していることがわかりました。この新規抗酸化脂質の化学構造を特定した研究について紹介します。

著者: 太田伸二 (広島大学大学院生物圏科学研究科)

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2013年03月02日掲載 【ショウジョウバエは空腹状態で記憶力があがることを発見】

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さまざまな記憶障害を改善することは、QOLの向上に重要です。記憶研究が進んだ結果、記憶メカニズムについて解明されつつありますが、記憶障害を効果的に改善する方法はこれまで確立されていません。今回私たちは、ハエを空腹状態にすると長期的な記憶が促進されること、さらにその分子メカニズムを明らかにしました。

(絵: 久保田珠美)

著者: 平野恭敬 (東京都医学総合研究所・科学技術振興機構さきがけ)・齊藤 実 (東京都医学総合研究所)

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2013年03月01日掲載 【子供とおばあちゃんが戦って巣を守るアブラムシ】

防御のための分泌液を出す無翅成虫

昆虫の社会においては、生存に必要な仕事を仲間同士で分担して行っています。今回私たちは、産まれたばかりの幼虫と年老いた成虫が防衛し、その他の個体は繁殖に専念するという役割分担を発見しました。「子供とお年寄りが防衛する」というと変に聞こえますが、実際は集団を維持するための合理的な戦略なのです。

著者: 植松圭吾 (ケンブリッジ大学)・柴尾晴信 (東京大学大学院総合文化研究科)

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2013年02月27日掲載 【"おとり"受容体が体の成長を調節する】

モデル生物のショウジョウバエ

我々ヒトの体の大きさが個人個人で異なるように、昆虫をはじめとする様々な生き物の体の大きさは生育環境や遺伝的背景によって大きく変わります。しかし、生物の体の成長がどのように調節されて最終的な体の大きさが決定されるのかについては、いまだ不明な点が数多く残されています。

本コラムでは、最近筆者らがショウジョウバエを用いて明らかにした新規の成長制御因子"SDR"について紹介いたします。

著者: 岡本直樹・西村隆史 (理研CDB・成長シグナル研究チーム)

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応用動物学/昆虫学最新トピック

プロの研究者でもまだ知らないような、出来たてホヤホヤの最新研究成果を分かりやすくお伝えします。

日本応用動物昆虫学会(応動昆)

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