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	<title>AEZ_Column</title>
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	<updated>2008-08-07T07:41:56Z</updated>
	
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	<title>植物のかおりで夜を判断</title>
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	<published>2008-06-08T21:00:00Z</published>
	<updated>2008-06-09T01:37:45Z</updated>
	
	<summary>どのようにして、昼と夜を区別していますか？夏至に近づくにつれて「日が長くなったな...</summary>
	<author>
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	</author>
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	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">どのようにして、昼と夜を区別していますか？夏至に近づくにつれて「日が長くなったなあ」とか、秋になると「あっという間に日が暮れるなあ」という感覚をお持ちだと思います。</p>
<p class="indent">その昼夜は何によって感じていますか？おそらくほとんどの人の答えは光でしょう。しかし、別のものによって昼夜を区別している虫がいます。今回のむしむしコラムはそんな虫のお話です。</p>]]>
		<![CDATA[<h3>その虫とは？</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_photo11.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/shiojiri_photo11.php','popup','width=817,height=600,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_photo1-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真1: アワヨトウ(<i>Mythimna separata</i>)幼虫<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div><p class="indent">アワヨトウ(粟夜盗)はその名の通り、イネ科を夜に盗む(食害する)虫です(写真1)。近年において日本では滅多に大発生はなくなりましたが、昔は夜になると田圃からワサワサという音がして、翌日にはイネは殆ど壊滅状態になっているということがあったそうです。このワサワサという音はアワヨトウ幼虫がイネを喰っている音だったそうです。翌朝には見るも無残なイネの残骸があるだけで、犯人の幼虫は見当たらなかったそうです。いくつかのの論文でもアワヨトウ幼虫の夜行性が報告されています。佐藤ら(1980)の論文によると、若令期は葉の鞘部分にいて、どのような活動をしているのかよく分からないけども、3令ごろになると明確な夜行性のリズムを刻むようになり、昼間は葉の合わさったところや、トウモロコシが植わっている土の中に隠れていたとあります。これらのことから、アワヨトウ幼虫が夜行性であるということがうかがえます。</p>

<h3>アワヨトウの飼育から</h3>
<p class="indent">私たちは研究室で、アワヨトウを飼育するのに人工飼料を使っていました。人工飼料がない場合、餌になる植物(トウモロコシやイネ)を育てなければならず、特にアワヨトウは大食家なので大変なのですが、巨大なソーセージ型で販売されている人工飼料を切って与えるだけですくすく順調に育つのでとても楽でした。</p>
<p class="indent">さて、アワヨトウをしばらく飼育して、餌を換えているときに、「あれ？」っと思いました。人工飼料の上にアワヨトウ幼虫が沢山のっかって食べているのです。アワヨトウは夜行性だからと思い、隠れる場所として濾紙を裂いたのを横においていたのですが、そこに隠れてジッとしている幼虫は半分ぐらいで、他は餌の上にいてムシャムシャと食べているのです。もちろん、餌を変えているのは日中で飼育室に電気がついているときなのです。</p>
<p class="indent">「あれっ？こいつらって、夜行性じゃないのん？なんで光があるのに堂々と食べてるんやろう。」と思いました。飢餓状態にしているわけではなく、餌は常に余っているのです。不思議に思い、アワヨトウの夜行性を報告してきた論文を読み返してみました。</p>

<h3>植物の効果</h3>
<p class="indent">さて、これまでの報告と、私たちの研究室の条件では、何が異なるのでしょうか？それは簡単にわかりました。これまでの報告において幼虫の観察は植物を用いて行われていました。しかし、私たちの研究室では人工飼料を使っていたのです。つまり、餌が植物か人工飼料かの違いなのです。そこで、同じ飼育条件で餌だけをトウモロコシの葉にしてみました。すると、昼間、殆どの幼虫はトウモロコシ葉ではなく、隠れ場として作っておいた濾紙の下でジッとしているのです。トウモロコシを食べていないわけではありません。トウモロコシに食痕がついているし、糞も転がっているのです。</p>
<div class="figure-left figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig1.pdf" target="_blank"><img alt="図1: 実験装置－飼育容器のそばにトウモロコシを置くと？" src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig1thum.jpg" width="240" height="206" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: 実験装置－飼育容器のそばにトウモロコシを置くと？<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig2.pdf" target="_blank"><img alt="図2: 植物の有無によってアワヨトウ幼虫の隠れ率は変化する" src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig2thum.jpg" width="240" height="198" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: 植物の有無によってアワヨトウ幼虫の隠れ率は変化する<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent clearfloat">植物を餌にすると、幼虫が夜行性の行動を示すことが分かりました。どの実験においてもそうですが、始めから当たりをつけて本格的な設定の実験をするわけではありません。予備実験と称して大雑把にサンプル数もそれほど取らずに行い、明らかに違いが現れたときに、本格的に今後の展開も考慮して設定を考えます。</p>
<p class="indent">実験にはカップの蓋の部分にメッシュをはった透明プラスチックカップを使いました。そのカップの中に人工飼料と濾紙を小さく折りたたんだものを置き、幼虫を1匹入れます(図1a)。それを明るい状態/暗い状態のインキュベーター内に配置し、2時間ごとに計8時間のアワヨトウの隠れ率を調べました。その結果、場所の明暗にかかわらず、隠れている幼虫の数は同じでした(図2:黒線)。人工飼料で飼っている限り、隠れる行動は光と無関係に一定の割合で起こっているのです。飼育していて感じた不思議な行動が、キチンとしたデータとして出されたわけです。</p>
<p class="indent">それでは、トウモロコシを餌にしたときに隠れたのは何故なのでしょう？そこで、人工飼料を餌とし、幼虫の周囲にトウモロコシを触れられないように配置してみました(図1b)。その結果、明るい状態にある幼虫は隠れていて、暗い状態にある幼虫は隠れ場から出てきて餌上にいたりその他の場所にいたのです(図2:緑線)。この2つの実験から興味深い事実がわかりました。</p>
<ul>
	<li>(1)	アワヨトウは一定の比率で隠れたり餌を食べたりするが、光はアワヨトウの隠れる行動に関係ない。</li>
	<li>(2)	明るい状態での植物の存在は、隠れ率を有意に向上させる(図2の上矢印)。</li>
	<li>(3)	暗い状態での植物の存在は、隠れ率を減少させる(図2の下矢印)。</li>
</ul>

<h3>植物の何が原因(影響している)？</h3>
<p class="indent">さて、植物を周囲に置いた効果は、視覚的なものの可能性と、嗅覚的な可能性の2つが考えられます。つまり、アワヨトウはトウモロコシ株が見える、見えないと言う視覚情報によって行動を変えているのか、トウモロコシ株の放出するかおりの昼夜の違いによって行動を変えているかです。</p>
<p class="indent">この実験中、2時間ごとにインキュベーターを開けて幼虫のいる場所を調べているとき、どうも2つのインキュベーターを開けたときのかおりが異なっているように感じていました。そこで、2つ目の仮説を調べてみることにしました。大きなケースにトウモロコシを入れ、下から空気を流し上から排出するようにしました。そして排出口からチューブをつなげ、幼虫がおかれているインキュベーターにチューブの先をいれておきました。それによって、視覚情報は排除し、トウモロコシのかおりだけがインキュベーターに流れ込むようにしました(図3)。</p>
<div class="figure-left figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig3.pdf" target="_blank"><img alt="図3: 実験装置－植物と幼虫、どちらの明暗が重要？" src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig3thum.jpg" width="240" height="398" /></a>
	<p class="no-indent">
		図3: 実験装置－植物と幼虫、どちらの明暗が重要？<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig4.pdf" target="_blank"><img alt="図4: アワヨトウ幼虫は植物が出すかおりに反応して隠れる" src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig4thum.jpg" width="240" height="210" /></a>
	<p class="no-indent">
		図4: アワヨトウ幼虫は植物が出すかおりに反応して隠れる<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent clearfloat">この実験設定で、植物の明・暗×アワヨトウ幼虫の明・暗の4通り調べることができます。まずはトウモロコシ未被害株(健全株)を用いて実験を行いました。結果は予想通りでした(図4a)。明るい条件下の健全植物が放出するかおりに暴露されたアワヨトウ幼虫は、その幼虫自体が暗条件であっても明条件であっても、同じように高い隠れ率を示しました。逆に、暗い条件の健全植物が放出するかおりに暴露されたアワヨトウ幼虫は、それらが暗条件であっても、明条件であっても同じように低い隠れ率を示しました。この実験系から、図2の結果は、アワヨトウがトウモロコシ株由来のかおり成分に反応して隠れ率=夜行性を決定していることが示されたのです。</p>
<p class="indent">図2の結果をもたらした要因としてトウモロコシ株のかおりだということが分ったのですが、これまでの実験では健全株を用いていました。しかしよく考えるまでもなく、アワヨトウの間近にあるトウモロコシ株は、そのアワヨトウが食害した株です。そこで次に食害株を用いて同様の実験を行いました。その結果はさらに良好なものでした(図4b)。明期の植物のかおりが積極的にアワヨトウ幼虫を隠れさせ、また暗期の植物のかおりが積極的にアワヨトウに隠れ家から外に出させる効果があるのです。</p>
<p class="indent">では、どのような成分が隠れさせたり、隠れ家から出させたりするのでしょうか。また健全葉と被害葉で同じ成分がそのような機能をもっているのか、あるいは被害株では新たに別の成分が出て、夜行性の行動反応を一層顕著にしているのか等、夜行性を支配する化学成分の特定は興味深いところであり、現在さらに研究を進めているところです。</p>

<h3>なぜアワヨトウは光ではなくトウモロコシ葉のかおりを「夜になった」という情報として使うのか</h3>
<p class="indent">一日24時間、その中での明暗の周期というのは、地球上で最も安定したサイクルです。この光の変化を多くの生物は利用して、昼行性だったり夜行性だったりします。アワヨトウはこのような安定なリズムを利用しないで、なぜトウモロコシ株のかおり変化を利用しているのでしょうか?　なにか光を利用するより有利な点があるのでしょうか？</p>
<div class="figure-left figure-240px">
	<img alt="shiojiri_photo2.jpg" src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_photo2.jpg" width="150" height="279" />
	<p class="no-indent">
		写真2: カリヤコマユバチ(<i>Cotesia kariyai</i>)。上が成虫、下が繭。
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig5.pdf" target="_blank"><img alt="図5: 内部寄生蜂の生活史" src="http://column.odokon.org/archives/shiojiri_fig5thum.jpg" width="240" height="186" /></a>
	<p class="no-indent">
		図5: 内部寄生蜂の生活史<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent clearfloat">ここですこし夜行性の話から外れて、トウモロコシ葉のかおりの機能について考えてみます。アワヨトウ幼虫にはカリヤコマユバチ(以下カリヤと省略)という主要な天敵が存在します(写真2)。カリヤはアワヨトウ幼虫のみに寄生し、アワヨトウ2令から6令期までの幼虫ステージに40～80もの卵を幼虫体内に産みこみます。そして卵は幼虫の体内で孵化し、幼虫の体内を食べながら成長し、蛹になる前に脱出します。そのときに、寄生されていたアワヨトウ幼虫は死んでしまいます(寄生蜂の生活史:図5)。さてこの体長たった6～7mmのカリヤ、子供を残すためには寄主アワヨトウ幼虫をなんとかして発見しなければなりません。しかも難儀なことに、アワヨトウ幼虫は夜行性であり日中は株や地面に潜んでいるのですが、カリヤは昼行性です。どのようにしてアワヨトウの潜んでいそうな株を発見するのでしょうか?先に述べたようにアワヨトウは昼には葉の間や株元に潜んでいるので、視覚に頼るのは難しそうです。結論から述べるとカリヤの寄主発見には、アワヨトウの食草のかおりが大きな役割を果たしています。</p>
<p class="indent">まずカリヤは植物の緑のかおり(草をちぎったときの青臭いかおりです)に誘引されます。さらに健全株のかおりよりもアワヨトウの食害を受けた株のかおりに誘引されます。この二段階の誘引によって、カリヤは効率よくアワヨトウ食害株を発見すると考えられています。植物から出されるそのかおりは夜になると被害株でも著しく低下します。ここで興味深い仮説が浮かび上がります。</p>

<p class="indent">「このかおりであいつはやってくる。かくれなければ・・・」</p>

<p class="indent">つまり昼間カリヤを誘引するかおりがトウモロコシ株から出ている限り、アワヨトウは隠れており、夜になってそのかおりが出なくなったら現れ、植物を食べていると考えられます。これは今のところあくまで、何故かおりを日周行動の刺激にしているのかの仮説なので、実証試験が必要です。</p>

<h3>「面白い現象」の一般化から害虫管理へ</h3>
<p class="indent">先の仮説の検証もさることながら、このような現象がどの程度普遍的であるのかは興味あるところです。また、アワヨトウ幼虫がどのかおり成分を利用して隠れたり、隠れ場から出て植草を食べたりするのかについても興味深いところです。</p>
<p class="indent">このような研究は、現象の一般化あるいはパタン検出過程で、基礎生物学的に重要です。またこのような研究は同時に害虫管理技術開発にもダイレクトにつながると考えられます。たとえば、アワヨトウに隠れる行動を解発する成分を利用して、夜間の食害量を減少させることができるかもしれません(そのまま餓死してくれるともっと良いでしょう)。これは基礎的な研究への投げ返しにもなってきます。つまり、どの程度のこのかおりシグナルに依存しているのか。餓死するまでこのシグナルを尊重するのか、あるいはある一定の空腹レベルに達するとシグナルを無視するのか、などという点はアワヨトウと植物間の共進化の視点からも興味深いと思われます。逆に、夜のかおりを昼間に処理することで、アワヨトウを昼間に葉上に誘い出すこともできるかもしれません。それによって鳥の捕食圧やカリヤの寄生率が高まるかもしれません。また農薬にさらされる確率も上がるでしょう。もしうまくいけば、その結果はまた、夜行性であることの理由(夜行性であるコストとベネフィットを計るためのパラメータ)が解明され、基礎的に重要となってくるでしょう。このように基礎と応用の両側面から現象を捉え、相互依存しあいながら両研究が発展していくことが、実際に役に立つ、しかも興味深い研究になると思われます。</p>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>樹液に来るチョウの働きについて</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2008/0521_080000.php" />
	<id>tag:column.odokon.org,2008://1.49</id>
	
	<published>2008-05-20T23:00:00Z</published>
	<updated>2008-05-21T00:41:55Z</updated>
	
	<summary>訪花性のチョウは、花粉媒介による植物へのメリットがあると説明できます。では、樹液...</summary>
	<author>
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	</author>
			<category term="faq" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
	
	
	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="no-indent">訪花性のチョウは、花粉媒介による植物へのメリットがあると説明できます。では、樹液に集まるオオムラサキやゴマダラチョウ等は、樹にとって何かメリットがあるのでしょうか？</p>]]>
		<![CDATA[<p class="indent">夏の雑木林では、クヌギやコナラなどの広葉樹の樹液を吸いにカブトムシやクワガタ、スズメバチやチョウなど様々な昆虫が集まってきます。でも樹液が出ている樹はそう多くありません。どうしてでしょうか？</p>
<div class="figure-left figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/sapfeeder01.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/sapfeeder01.php','popup','width=1377,height=960,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/sapfeeder01-thumb.jpg" width="240" height="169" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真: 樹液を吸うクロヒカゲ成虫<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/sapfeeder02.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/sapfeeder02.php','popup','width=657,height=480,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/sapfeeder02-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真: 樹液に集まるカブトムシ成虫<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent clearfloat">樹液が出ている樹の多くは、内部にボクトウガやカミキリムシの幼虫が潜んでいます。これらの幼虫は樹皮のすぐ下にある維管束形成層という部分を食べています。形成層は樹木の血管にあたる師管と導管がそれぞれ集まった部分(師部と木部)に囲まれていて、幼虫の食害によって管が切断されると樹木の血液にあたる師管液や導管液が外ににじみ出てきます。このうち師管液には糖類やアミノ酸が多く含まれており、外ににじみ出るとたちまち酵母や微生物が繁殖し、液を発酵させて独特の匂いを作り出します。匂いの主成分はエタノールや酢酸です。その匂いをかぎつけて様々な昆虫が樹液(に含まれる栄養素)を吸いにやってくるのです。つまり昆虫の餌となる樹液とは「潜孔虫に食害され、傷口からにじみ出た樹木の体液が発酵したもの」と言えるでしょう。</p>
<p class="indent">樹液を吸いにやってくる昆虫というのは、樹木にとって傷口に群がる虫たちということになります。これらの昆虫から樹木が受けとる利益はおそらくないと考えられます。</p>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>アゲハ幼虫の紋様の切り替えは幼若ホルモンによって制御されていた</title>
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	<published>2008-04-15T14:45:00Z</published>
	<updated>2008-07-11T06:12:46Z</updated>
	
	<summary>アゲハPapilio xuthusの幼虫を飼育された方も多いと思いますが、終齢に...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
			<category term="topic" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
	
	
	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">アゲハ<i>Papilio xuthus</i>の幼虫を飼育された方も多いと思いますが、終齢になるときの劇的な紋様の変化には、目を見張るものがあります。若齢幼虫は鳥のフンに擬態し、終齢幼虫は周囲の食草に紛れ込む効果があると考えられています(図1)。このような現象について、小学生の頃から不思議に思われた方もいるのではないかと思いますが、その分子レベルでの実体は最近まで全く不明でした。その原因の一つには、紋様に関わる遺伝子がそもそも不明であったことが挙げられると思います。</p>]]>
		<![CDATA[<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/futahashi_fig1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/futahashi_fig1.php','popup','width=817,height=1202,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/futahashi_fig1-thumb.jpg" width="240" height="360" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: アゲハの4齢幼虫(上)と5齢幼虫(下)。Futahashi & Fujiwara, 2008を改変。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">筆者らは、アゲハの若齢幼虫と終齢幼虫の間で遺伝子発現を比較することで、それぞれの紋様に関わる複数の遺伝子の同定に成功しました。その中には、若齢幼虫のイボ状の突起の部分で特異的に発現するクチクラ蛋白質(HCP1, HCP2)や終齢幼虫の緑色の形成に関わる蛋白質(BBP)、さらにそれぞれの紋様の黒色部の形成に関わる酵素(TH, DDC, GTPCHI, yellow)、目玉紋様の赤いスポットの形成に関わる酵素(ebony)などが含まれています(Futahashi & Fujiwara, 2005, 2006, 2007, 2008)。これらの遺伝子の発現が、4齢から5齢になるときにだけ大きく変化することが、紋様の劇的な変化の直接的な原因であると考えられました。</p>
<p class="indent">それでは、この遺伝子発現の劇的な変化は何が引き起こしているのでしょうか。</p>
<div class="figure-right figure-240px clearfloat">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/futahashi_fig2.pdf" target="_blank"><img alt="図2: 体液中のJH濃度は4齢幼虫の間に下降しており、4齢初期(水色の期間)にJH類似物を投与すると、5齢幼虫の紋様が若齢型へと変化する。" src="http://column.odokon.org/archives/futahashi_fig2thum.jpg" width="240" height="136" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: 体液中のJH濃度は4齢幼虫の間に下降しており、4齢初期(水色の期間)にJH類似物を投与すると、5齢幼虫の紋様が若齢型へと変化する(右上)。処理によっては中間型も現れる(右中)。また、同時に遺伝子発現も若齢型に変化する(囲み内)。HCP1とHCP2は、若齢のイボ状突起の領域で発現するクチクラ蛋白質で、BBPは青色色素結合に関わる蛋白質。rpL3は恒常的に発現する遺伝子。Futahashi & Fujiwara, 2008を改変。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">この変化は脱皮を介して行われていることから、脱皮・変態に関わる2つのホルモン(エクジソンとJH)に着目しました。JH(幼若ホルモン)は、一般的にその濃度が高いときにエクジソンのパルスが生じると幼虫から幼虫へと脱皮を繰り返すのに対し、JH濃度が下がってからエクジソンのパルスが生じると蛹へと変態することが知られています。アゲハ幼虫で体液中のJH濃度の変化を測定したところ、4齢になってすぐに急激に減少していることが確認されました(図2)。また、この時期(図2の水色の期間)にJH類似物を幼虫に塗布すると、通常見られない鳥のフン型の5齢幼虫が現れました(図2右)。さらに、JH処理個体では、遺伝子発現も若齢型に変化していることが確認されました(図2、囲み内)。以上の結果はJH依存的にアゲハ幼虫の紋様が決められていることを示唆しています(Futahashi & Fujiwara, 2008)。</p>
<p class="indent">つまり、アゲハでは鳥のフン幼虫、緑の幼虫、蛹という3段階の変化が、いずれもJH濃度に応じて生じていると考えられるのです。JHによる遺伝子ネットワークは、まだ未解明な部分が多く残されていますが、アゲハ幼虫の解析から、紋様形成とJHによる遺伝子発現という2つの分野に新たな知見が得られることが期待されます。</p>
<p class="indent">ここでの内容について、さらに詳しく知りたい方は、以下の文献をご参照ください。</p>
<h3></h3>
<ul>
	<li>Futahashi R., Fujiwara H. (2008) Juvenile hormone regulates butterfly larval pattern switches. <i>Science</i> 319: 1061.</li>
	<li>Futahashi R., Fujiwara H. (2007) Regulation of 20-hydroxyecdysone on the larval pigmentation and the expression of melanin synthesis enzymes and <i>yellow</i> gene of the swallowtail butterfly, <i>Papilio xuthus</i>. <i>Insect Biochem. Mol. Biol.</i> 37: 855-864.</li>
	<li>Futahashi R., Fujiwara H. (2006) Expression of one isoform of GTP cyclohydrolase I coincides with the larval black markings of the swallowtail butterfly, <i>Papilio xuthus</i>. <i>Insect Biochem. Mol. Biol.</i> 36: 63-70.</li>
	<li>Futahashi R., Fujiwara H. (2005) Melanin-synthesis enzymes coregulate stage-specific larval cuticular markings in the swallowtail butterfly, <i>Papilio xuthus</i>. <i>Dev. Genes Evol.</i> 215: 519-529.</li>
</ul>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>ミイデラゴミムシ</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2008/0409_092000.php" />
	<id>tag:column.odokon.org,2008://1.47</id>
	
	<published>2008-04-09T00:20:00Z</published>
	<updated>2008-04-09T00:30:36Z</updated>
	
	<summary>ヘッピリムシとかミイデラゴミムシとか呼ばれる虫はおしりからガスを勢いよく噴射しま...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
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	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="no-indent">ヘッピリムシとかミイデラゴミムシとか呼ばれる虫はおしりからガスを勢いよく噴射します。大変興味深い現象ですが、いったいどんな仕組みになっているのでしょうか？</p>]]>
		<![CDATA[<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/miideragomi.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/miideragomi.php','popup','width=657,height=480,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/miideragomi-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真: ミイデラゴミムシ成虫<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">ミイデラゴミムシ(<i>Pheropsophus jessoensis</i>)は、鞘翅目(コウチュウ目)オサムシ上科ホソクビゴミムシ科に属します。ゴミムシ類のなかでもかなりの普通種で、「ヘッピリムシ」といえばふつう、本種のことをさします。北海道から奄美大島まで分布し、海外では中国と朝鮮半島に分布します。</p>
<p class="indent">ヘッピリムシを捕まえようとすると、腹部末端よりポンと音を立てて、ガスを噴出します。へっぴり腰だからこういう名前が付いているのではなく、音付きの臭い屁をこくからこんな名前が付けられています(ただし、噴射口は肛門とは別なので、正しい意味でのおならではありません)。</p>
<p class="indent">ヘッピリムシの存在は江戸時代にはすでに知られており、たとえば根岸鎮衛(やすもり)(1737～1815)の『耳嚢』(みみぶくろ、岩波文庫にありますが、品切れ？)の9巻、「屁ひり虫奇説」には「背中に白き星あり。右むしを捕へ、板或ひは畳におしつけて、屁をひり粉を出す事、背の星の数程なり。其数過(すぎ)ぬれば、屁をひらず、また粉を出さざるよし」と書かれています。背の星が白いと書かれていますが、本種のは黄斑で、しかも大きいのは2個だけです。別種のことを書いたのかもしれませんね。いずれにせよ、江戸時代のうわさ話の聞き書きですし、この時代には分類学は発達していませんでした。スズメが海に飛びこむとハマグリになる、と本気で信じられていた時代ですから、この観察はかなり正確とほめるべきです。</p>
<p class="indent">また、ミイデラゴミムシの「ミイデラ」ですが、京都の「三井寺(園城寺)」のことかなと連想はされるのですが、その理由はよく分かっていませんでした。この寺で発見されたわけでもなさそうだから、なんかの洒落だろうな、という気はします。しかし、どうやらその語源が、鳥羽絵「放屁合戦」が三井寺にあるからだとする説が、発表されたようです(<a href="http://www.lbm.go.jp/yahiro/kenkyu/midera.html" target="_blank">地表性甲虫談話会会報1:2-6</a>に紹介あり)。「屁」や「文化財」まで関わってくるなんて、昆虫学も奥が深いです。</p>
<p class="indent">本種の生態は、成虫だけでなく、幼虫もなかなか面白いのですが、それらの解説は他のサイトに譲ることにして(例えば<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/" target="_blank">Wikipedia</a>、関連文献も入手できます)、ここでは、ガスの噴射機構についてのみお答えしたいと思います。</p>
<p class="indent">海外にいるミイデラゴミムシの近縁種では、体内にヒドロキノン(1,4-ベンゼンジオール、C<sub>6</sub>H<sub>6</sub>O<sub>2</sub>、ベンゼン環にヒドロキシ基が2個、パラ体でついた構造式)と過酸化水素(H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>)という2種の化学物質が分泌される小室をもっています。この小室では両者は化学反応を起こしませんが、攻撃されるとバルブを開いて、この2つを頑丈な壁に囲まれた第2の小室に送りこみ、そこに酵素(ペルオキシダーゼとカタラーゼ)を加えます。すると、急激な化学反応が起こり、ベンゾキノン(1,4-ベンゾキノン、C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>O<sub>2</sub>,ベンゼン環がパラ体でケトンとなった物質)と水(H<sub>2</sub>O)が生成され、100℃以上のガスとなって、襲ったものに噴射されます。恐ろしいことに、このガスはゴミムシの思いどおりの方向に噴射できます。また、敵が1回であきらめないようなら、数発、連続噴射できます。この種では体長の4倍の距離までガスを着弾でき、連続29回の噴射が可能、という記録があります。ゴミムシ類の主な天敵であるカエルになら、1回の噴射でかなりのダメージを与えることができますし、不用意に本種をさわってしまった人間に対しても、皮膚に茶色いシミを作り、悪臭をこすりつけることができます。ベンゾキノンはタンパク質との結合性が高く、また酸化剤だからです。</p>
<p class="indent">ゴミムシの防御システムは、あまりによく出来ているので、反進化論者は100年ほど前から、眼の誕生と同様、神の創造の証拠としてこれを取り上げています(日本語でも検索できますが、Bombardier beetle、quinoneなどの英語を検索語として使えば、一晩で読み切れないほど、ヒットします)。こんなに精巧な化学システムが漸進的な小進化の積み重ねで出来るわけがない、そんな構造を獲得しようとする昆虫は、設計の途中でみな自爆して、絶滅しちゃうだろう、というわけです。</p>
<p class="indent">しかし、ゴミムシ類の近縁種間の比較研究は、このへっぴりシステムがしだいに改良されてきたことを示しています。また、生物が新しい機能を進化的に獲得するさいには、あり合わせの器官で間に合わせることが多いわけですが、ヒドロキノンは昆虫類では脱皮後に外皮を固めるのに必須な物質ですし、過酸化水素も活性酸素と同様、生体防御反応などによって血中で簡単に生成されます。カタラーゼは過酸化水素を水と酸素に分ける反応を触媒する酵素で、好気的細胞なら必ずもっている酵素ですし、ペルオキシダーゼ(過酸化酵素)も植物の病害抵抗性にかなり普遍的な酵素です。『眼の誕生』(アンドリュー・パーカーの好著、訳書は草思社から)と同様、ミイデラゴミムシの存在も、むしろ進化学の面白さを知る、かっこうの素材だと思います。</p>
<p class="indent">わが国のゴミムシ類については、60属132種の尾節防御システムを比較検討したKanehisa & Murase(1977)の論文が、応動昆英文誌(<i>Applied Entomology and Zoology</i>)の、12巻3号、225～235頁に掲載されています。より詳細に知りたい方は、当サイトの学会誌紹介のページからCiNiiへのリンクに移動してください。pdfファイルが無料でダウンロードできます。本稿によると、ミイデラゴミムシはベンゾキノンのほか、メチルキノン(2-メチル-1,4-ベンゾキノン、C<sub>7</sub>H<sub>6</sub>O<sub>2</sub>、ベンゾキノンにメチル基がついた物質)をもっており、防御物質の成分比はベンゾキノンとメチルキノンが6:4だそうです。いまから30年前の論文ですが、この論文を読んでも、ゴミムシ類のへっぴりシステムの進化がなんとなく見えてくるような気がします。</p>]]>
	</content>
</entry>
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	<title>ハダニが増えるとやって来る天敵ケシハネカクシ</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2008/0214_174500.php" />
	<id>tag:column.temp.odokon.org,2007://1.43</id>
	
	<published>2008-02-14T08:45:00Z</published>
	<updated>2008-02-14T08:34:21Z</updated>
	
	<summary>ガーデニングや家庭菜園などを行っていると、赤や緑の小さなハダニが植物上にたくさん...</summary>
	<author>
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	</author>
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		<![CDATA[<p class="indent">ガーデニングや家庭菜園などを行っていると、赤や緑の小さなハダニが植物上にたくさん発生し、被害に悩まされることがあります。実は、ハダニは農家の方々も防除に苦労する農業害虫ですが、幸いにも、ケシハネカクシという天敵昆虫の働きによって被害が抑えられることがあります。</p>
<p class="indent">彼らはハダニがたくさん発生した作物上に突如あらわれ、短期間に大半のハダニを食い尽くし、その後どこかに飛び去ってしまいます。どこから来て、どこに行くのでしょう？また、ハダニの居場所がなぜ分かるのでしょう？</p>
<p class="indent">最近の研究成果を紹介し、これらの疑問について考えてみましょう。</p>]]>
		<![CDATA[<h3>スマートなのに大食漢</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig1.php','popup','width=456,height=285,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig1-thumb.jpg" width="240" height="155" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: ナミハダニ(真ん中下は雌成虫、周囲に卵がある)による被害(白く抜けた部分)<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">最初にハダニを簡単に紹介します。ハダニは、名前の通り、植物の葉などに集団で寄生するダニで、植物組織に含まれる栄養分などを吸収し生活しています。大変小さく(成虫でも約0.5mm)人目に付きにくい上に、増殖能力も高いので、農家の方々が気付かないうちに爆発的に増えることがあります。こうなると、作物は葉が落ちたり、枯れたりするなどの大きなダメージを受けます。農薬による防除も難しく、日本では、ナミハダニ(図1)やカンザワハダニなどが果樹や野菜、花卉などの重要害虫として知られています。</p>
<div class="figure-left figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig2.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig2.php','popup','width=1385,height=976,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig2-thumb.jpg" width="240" height="171" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: お腹を反り上げながらハダニを探すケシハネカクシ成虫<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig3.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig3.php','popup','width=748,height=552,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig3-thumb.jpg" width="240" height="181" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図3: カンザワハダニ雌成虫をつかまえたケシハネカクシ幼虫(左上は食べられた後のハダニの残骸)<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent clearfloat">次に、ケシハネカクシ(正式名はヒメハダニカブリケシハネカクシ)を紹介します。彼らは成虫でも約1ミリと大変小さいのですが、カブト虫やテントウ虫と同じ甲虫です。つぶらな瞳に流線型に近い体つき、お腹をときどき反り上げる仕草(図2)が特徴的です。雌成虫はスマートな容姿に似合わない大食漢で、ハダニの卵であれば1日に約100個、生存期間中に約7,500個も食べます。幼虫も大変な食欲の持ち主で、4～5日間の幼虫期間中に200～300匹のハダニを食べます(図3)。ハダニがたくさん発生した作物にケシハネカクシがよく見られるのは、彼らがたくさんの餌を必要とするからです。最初に成虫が作物上に飛来し、彼らとその子供(幼虫)が短期間に大半のハダニを食い尽くすことから、増えすぎたハダニをいっきに減らす「火消し役」として活躍していると考えられています。さらに彼らには、農薬を定期的に散布する作物上でも比較的よく見られるという特徴があります。例えば果樹園で農薬を定期的に散布すると、ハダニの天敵昆虫(ハダニアザミウマ、キアシクロヒメテントウムシなど)の多くはほとんど発生しなくなるのですが、ケシハネカクシの場合にはそうした傾向はあまり見られません。しかしながら、他の天敵昆虫よりもケシハネカクシの方が農薬に強い(詳しく言えば、色々な農薬が体にかかっても死なない)という報告はされておらず、どのような理由でそうなるかは分かっていません。</p>

<h3>どこからやって来る？</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig4.pdf" target="_blank"><img alt="図4: ナシ園と周辺環境の間のケシハネカクシの移動実態" src="http://column.odokon.org/archives/shimoda_fig4thum.jpg" width="240" height="114" /></a>
	<p class="no-indent">
		図4: ナシ園と周辺環境の間のケシハネカクシの移動実態<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">ケシハネカクシは大変な大食漢なので、作物上で良く見られるのはハダニが多い時期に限られます。それ以外の時期はどこにいるのかという問題については、ナシ園とその周辺の環境を対象にした私たちの研究成果(図4)から推察できます。</p>
<p class="indent">ナシ園では、夏になるとナミハダニやカンザワハダニがよく発生します。これらのハダニが増えると、春には見られなかったケシハネカクシも突如あらわれます。私たちの研究の結果、ケシハネカクシがもともと生息する場所(ハダニが発生する雑草や防風樹など)がナシ園の周辺にあって、そこから飛び出した成虫の一部が餌を求めてナシ園に飛び込んでくる(図4の赤矢印の部分)ことが分かりました。さて、たくさんのケシハネカクシが飛来したナシ園では、夏の間にハダニの密度が急激に低下するので、彼らは新たな餌を求めて今度はナシ園の外へと移動を開始します(図4の青矢印の部分)。このような理由により、秋になるとケシハネカクシはナシ園からほとんどいなくなり、ハダニが発生する雑草や防風樹などに再びあらわれることが分かりました。ケシハネカクシは、時には違う種類のハダニや植物を利用しながらも、餌が豊富な場所を求めて移動することで、世代を繰り返しているものと考えられます。</p>

<h3>ハダニを見つける工夫</h3>
<p class="indent">ところで、1mmたらずの小さなケシハネカクシ成虫にとって、広い野外を飛びながら、さらに小さなハダニがいる植物を見つけ出すことは大変難しいように思えます。しかしながら、彼らには私たちの想像以上の能力があることが分かってきました。例えば、先ほど紹介した私たちの調査では、ナシ園と周辺の環境(ハダニが発生する雑草や防風樹など)とは50m以上も離れていましたが、彼らはこの状況をものともせず、新たな餌を求め両方の生息場所を行き来していました。また、私たちが行った別の行動調査により、ケシハネカクシ成虫は10m以上離れた場所からでも、ハダニが発生する植物へと正確に飛んで行くことが分かりました。これらの調査結果から言えることは、私たちでもなかなか分からないハダニの居場所を、彼らは離れた場所から発見できるということです。小さな虫に秘められた大いなる能力に驚かされるとともに、いったい何を頼りにすればこんな芸当ができるのか、大変気になるところです。</p>
<p class="indent">さて、この疑問については、ハダニの被害を受けた植物から出る独特な匂い(以下、匂い物質)が手がかりのひとつとして利用されていると考えられます。「むしコラ」読者の皆さんは既にご存じかと思いますが、イモムシに襲われたトウモロコシが匂い物質を出して、害虫の天敵である寄生蜂を呼び寄せるという話があります(詳しくは「<a href="http://column.odokon.org/archives/2007/0327_152347.php">イモムシの唾液？</a>(2007年3月27日掲載)」を見てください)。これと同じように、ナシやマメなどの植物はナミハダニやカンザワハダニなどに寄生された時に匂い物質を出し、これにケシハネカクシが誘引されることが私たちの研究で明らかになってきました。ここで紹介した寄生蜂の話については、匂い物質生産のメカニズムや天敵誘引成分などが精力的に研究されていますが、ケシハネカクシについてはこうした研究はほとんど行われておらず、今後の研究の進展が期待されるところです。</p>

<h3>おわりに</h3>
<p class="indent">ケシハネカクシは大変小さく、人目に付かない昆虫ですが、農業害虫であるナミハダニやカンザワハダニなどの天敵として重要な存在です。読者の皆さんも、運が良ければ(?)、ガーデニングや家庭菜園などでたくさんのハダニが発生したときに見ることができます。おそらく彼らは、庭や畑、果樹園などの近くにひっそりと住んでいて、ハダニがたくさん発生した植物から放出される匂い物質にひかれて、これらの生息場所から飛んで来ると思われます。もしかすると、庭や畑などでフワフワ飛んでいる「小さな虫たち」のなかにはケシハネカクシが含まれているかもしれません。また、今回は残念ながら紹介できませんでしたが、実はケシハネカクシ以外にも重要な天敵(ミヤコカブリダニやケナガカブリダニなど)がいて、ハダニが増えすぎないよう働いていると考えられています。今回のコラムがきっかけとなって、葉っぱという小さな世界の中で繰り広げられるハダニと天敵たちの闘いに興味を抱いて頂ければ幸いです。</p>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>兵隊アブラムシの攻撃毒プロテアーゼ</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2007/1221_235800.php" />
	<id>tag:column.temp.odokon.org,2007://1.45</id>
	
	<published>2007-12-21T14:58:00Z</published>
	<updated>2008-01-28T10:26:14Z</updated>
	
	<summary>「社会性昆虫」というとすぐにアリやハチが思い浮かびますが、植物の害虫として悪名高...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
			<category term="column_main" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
	
	
	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">「社会性昆虫」というとすぐにアリやハチが思い浮かびますが、植物の害虫として悪名高いアブラムシ(アリマキ)に社会性の種類がいることは、あまり知られていないのではないでしょうか。アブラムシの社会には、子を産むことができる普通の虫と、子を産むことなく自分の仲間を守るために外敵と戦う兵隊幼虫という2種類の階級がコロニー内に存在します。このコラムでは、ハクウンボクハナフシアブラムシの兵隊幼虫から見つかった攻撃毒プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)について紹介します。</p>]]>
		<![CDATA[<h3>毒をもつアブラムシ</h3>
<p class="indent">おとなしそうに見えるアブラムシに兵隊がいて、しかも毒を持っているなんて意外に思われる方もいるかもしれません。それもそのはずです。アブラムシは世界中に約4,400の記載種がいますが、その中で兵隊をもつのは、現在知られているだけでわずか50種程度です。兵隊は種によって異なる武器を持っており、口針(植物の汁を吸うためのストロー)を使って毒を注入するタイプもいれば、肥大した脚で組み付きツノで突き刺すタイプもいます。ですから、毒をもつアブラムシといっても、ごく一部の種の兵隊だけが持っているのであり、その辺りの植物に群がっているアブラムシが持っているわけではありません。</p>
<p class="indent">しかしながら、この兵隊毒の威力はなかなか強烈です。兵隊よりずっと大きい敵でさえも、毒を注入されると激しくのたうちまわり、しばらくすると麻痺して死んでしまいます。兵隊を試しに人の手に乗せてみると、彼女らは(実は兵隊を含めてほとんどのアブラムシはメスです)やはりチクチクと刺します。刺されると痛かゆい感じがして皮膚が赤くなってしまうので、兵隊が何らかの毒物質を注入していることがわかります。台湾に生息するウラジロエゴノキアブラムシの兵隊毒などは強烈で、リスなどの小型動物も追い払ってしまうほどです。私も刺されたことがありますが、かなり痛いのに加え、蚊に刺されたような腫れが一週間ほどひきませんでした。このような兵隊の攻撃毒ですが、これまで研究の対象になったことはなく、構成成分などはまったくわかっていませんでした。</p>

<h3>兵隊特異的に発現するプロテアーゼ</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo1.php','popup','width=817,height=540,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo1-thumb.jpg" width="240" height="162" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真1: ハクウンボクハナフシアブラムシのゴール<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">私たちはハクウンボクハナフシアブラムシという社会性アブラムシから、兵隊攻撃毒の主要な成分として、ある種のプロテアーゼを発見することに成功しました(Kutsukake et al. 2004)。が、実を言うと、始めから兵隊の毒について調べようと思ったわけではなく、たまたま見つかったと言ったほうが正確かもしれません。当初私たちは、兵隊アブラムシにおける階級分化機構や社会行動に興味を持っていて、生態から生理、分子にいたる様々なアプローチから研究を進めていました。</p>
<div class="figure-left figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo2.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo2.php','popup','width=817,height=528,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo2-thumb.jpg" width="240" height="158" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真2: ハクウンボクハナフシアブラムシの兵隊(左)、2齢の普通幼虫(右)<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo3.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo3.php','popup','width=817,height=592,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_photo3-thumb.jpg" width="240" height="177" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		写真3: チャバネヒメカゲロウ幼虫を攻撃するハクウンボクハナフシアブラムシ兵隊<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent clearfloat">詳しい話に入る前に、研究材料であるハクウンボクハナフシアブラムシについて簡単にご紹介しましょう。このアブラムシはハクウンボクという木に珊瑚のような形をしたゴール(虫こぶとも言う, 写真1)をつくり、その中で数千匹、時には数万匹が一緒に生活しています。兵隊は2齢幼虫で出現しますが、すべてが兵隊になるわけではなく、普通の2齢幼虫もいます(図1)。兵隊と普通幼虫は様々な点で違いがあります。</p>
<ul>
	<li>子を産む能力(妊性): 兵隊は2齢幼虫のまま成長せず不妊なのに対し、普通幼虫は成長し、子を産む</li>
	<li>形態: 兵隊は強くキチン化した体と、頭部に太い剛毛をもつ(写真2)</li>
	<li>行動: 兵隊は外敵に対して攻撃する(写真3)、巣の清掃を行う</li>
</ul>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_fig11.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/kutsukake_fig11.php','popup','width=329,height=264,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_fig1-thumb.jpg" width="240" height="203" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: 社会性アブラムシの階級分化<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">このように、両者はずいぶん異なっているのですが、非常に面白いことに、兵隊も普通個体も一匹の幹母が単為生殖(オスとの交配なしに子を産む無性生殖)により産んだ子孫たちなので、まったく同一のゲノムを持つクローンなのです。つまり、どちらも同じ遺伝子セットをもっているのですが、遺伝子発現パターン(遺伝子の使い方)が異なるために、ある個体は兵隊に、別の個体は普通幼虫に分化するのです。では、どのような遺伝子が兵隊だけで発現しているのでしょうか? このような遺伝子を調べることにより、兵隊の階級分化や生物機能を分子レベルで説明することが可能になります。</p>
<p class="indent">そこで私たちは、cDNAサブトラクションという手法により、兵隊特異的に発現している遺伝子群を探索することにしました。その結果、カテプシンBというどの動物でも持っているプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の遺伝子が得られました。この遺伝子の発現量を詳しく調べてみると、兵隊での発現量は普通個体の約2,000倍も高いことがわかりました。このように兵隊特異的かつ大量に発現していることから、このプロテアーゼは兵隊にとって重要な役割をしているであろうことが想定されました。</p>

<h3>攻撃毒という機能</h3>
<p class="indent">では、いったいこのカテプシンBは兵隊においてどのような機能を担っているのでしょうか? どこの組織で発現しているかということは重要な手がかりになりますので、さっそく調べてみたところ、消化管(腸)で発現していることがわかりました。普通、消化管に存在するプロテアーゼといえば、食べものを消化する酵素と考えられますが、この場合は兵隊以外の個体でほとんど発現していないのですから、どうも違いそうです。それならば・・・吐き出しているのではないか? 実は、この妙案が攻撃毒への発見へとつながっていきます。私たちにはこの妙案を簡単に調べる良い方法がありました。私たちのグループでは、社会性アブラムシで初めて、ハクウンボクハナフシアブラムシを人工飼料上で累代飼育することに成功していました(Shibao et al. 2002)。この人工飼料は、シャーレ上に張られた薄い2枚のパラフィルム膜の間に、液体の餌をサンドイッチのように挟んだもので、アブラムシは膜に口針を刺して中の餌を吸うことができるしくみになっています。そこで、この人工飼料飼育系を利用して、兵隊を飼育した後の人工飼料を回収して調べてみたところ、カテプシンBが餌の摂取時にわずかに吐き出されていることがわかったのです。これは少し予想外の、しかしとても興味深い結果でした。そうなると、敵を攻撃している時はもっと大量に敵の体内に注入している可能性があります。なぜなら、兵隊は敵の体に口針を刺している時、体を低く構え、力みながら何かを一生懸命吐き出しているようにも見えるからです。その予想通り、兵隊に攻撃された後のガ幼虫の体内を調べてみると、かなりの量の兵隊のカテプシンBが検出されたのです。このことは、兵隊が攻撃時に、口針を通じて敵体内にカテプシンBを注入していることを意味していました。</p>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_fig2.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/kutsukake_fig2.php','popup','width=768,height=503,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/kutsukake_fig2-thumb.jpg" width="240" height="160" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: 本研究のまとめ。カテプシンBは兵隊の攻撃毒であった<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">カテプシンBが毒として働いている可能性が出てきたわけですが、まだ本当にそうなのかはわかりません。実際に敵を殺す能力を持っているかどうか? これが重要な点でした。そこで、カテプシンBを人工的に合成し、これを先の細いガラスキャピラリーを用いて他の昆虫(ガ幼虫)の体内に注入するという実験を行いました。これでガ幼虫が死ねば、カテプシンBが殺虫能力を持っていることになります。実験の結果、テストした約7割のガ幼虫が死んだのに対し、カテプシンBを熱失活させた溶液では、ガ幼虫は一匹も死にませんでした。すなわち、カテプシンBには確かに敵を殺す活性があるという結果が得られました。これらの実験結果から、カテプシンBプロテアーゼが兵隊の攻撃毒の主要成分の一つであるということが証明されたのです(図2)。</p>

<h3>おわりに</h3>
<p class="indent">ここでご紹介した兵隊アブラムシのカテプシンBプロテアーゼは、兵隊の主要な仕事であるコロニー防衛において、敵を殺す実行部隊(＝毒物質)として働く重要な分子であり、兵隊の生物学的機能に直接関係している分子であるといえます。カテプシンBはこれまで様々な生物で研究されていますが、毒として働くという知見は、この研究がはじめてです。このような毒カテプシンB遺伝子がどのように進化してきたのか、という興味深い疑問についても、私たちの最近の研究で次第に明らかになりつつあります。とはいえ、まだまだ未知な部分が多いこの毒プロテアーゼについては、今後、毒の作用メカニズムなどについても解明していく必要があるでしょう。</p>

<h3>参考文献</h3>
<ul>
	<li>Kutsukake, M., Shibao, H., Nikoh, N., Morioka, M., T. Tamura., T. Hoshino., S. Ohgiya. and T. Fukatsu. (2004) Venomous protease of aphid soldier for colony defense. <i>Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.</i> 101: 11338-11343.</li>
	<li>Shibao, H., Kutsukake, M., Lee, J-M. and Fukatsu, T. (2002) Maintenance of soldier-producing aphids on an artificial diet. <i>J. Insect Physiol.</i> 48: 495-505.</li>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>ホソヘリカメムシのプロバイオティクス</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2007/1102_213000.php" />
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	<published>2007-11-02T12:30:00Z</published>
	<updated>2008-01-28T10:25:19Z</updated>
	
	<summary>ヨーグルトを食べて生きたビフィズス菌を体内に取り込むと、体内環境が改善されて免疫...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
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	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">ヨーグルトを食べて生きたビフィズス菌を体内に取り込むと、体内環境が改善されて免疫力がアップ、花粉症やメタボリック症候群の予防にもなります----こんな話を最近よく耳にしませんか？人がヨーグルトを食べてビフィズス菌を取り込むように虫も有用な細菌を外から体内に取り入れて、これらを巧みに利用していることが最近の研究から分かってきました。ここでは、ホソヘリカメムシの腸内共生細菌について少しお話ししたいと思います。</p>]]>
		<![CDATA[<h3>私達にも身近な「共生細菌」</h3>
<p class="indent">「共生細菌」といっても、昆虫のように目には見えないため少し遠い存在に感じられるかもしれません。しかし、実は私達のずっと身近に彼らはいます。それがいわゆる「腸内細菌」です。</p>
<p class="indent">私達の腸内には数百種類、総重量にして1kg程にもなる細菌群が棲んでいます。これらはその雑多さゆえに研究が難しく、また個人によって細菌の種組成が異なるなどの理由から、それほど重要なものではないと長らく考えられてきました。しかし、無菌マウスなどを用いた近年の研究から、これらのいくつかは私達の食物分解・吸収、免疫系の正常な発達などにとても重要な役割を果たしていることが明らかになってきたのです。最近ではプロバイオティクス(宿主[ヒト]に良い影響を与える腸内細菌。またこれら善玉菌を、例えばヨーグルトのような形で生きたまま摂取すること。善玉菌を増やすことで腸内環境・体調の改善を目的とする)という言葉も盛んに使われるようになり、腸内細菌ががぜん注目を集めるようになっています。</p>

<h3>昆虫の共生細菌</h3>
<p class="indent">広く生物界を見渡してみると、私達よりも遥か以前に細菌の有用性に気付き、これらを体内に取り込み巧みに利用してきた生き物達が数多く存在します。その代表格はなんと言っても昆虫です。昆虫は陸上で最も多様化した生物群と言え、その食性も様々です。そして、中には栄養学的に見て非常に偏った食事をとっている昆虫も少なくありません。例えば植物の師管液しか食べないアブラムシ。植物の師管液はショ糖(炭素分)が豊富な反面、アミノ酸等の窒素分はほとんど含まれていません。それから血液食のシラミなども栄養バランスが偏ります。動物の血液には、昆虫の成長に必須なビタミンB類がほとんど含まれていないためです。これらの昆虫達は、その偏った食事ゆえの慢性的栄養不足を共生細菌により解決しています。つまり、体内に住まわせた共生細菌が不足栄養素をサプリメントしてくれるのです。</p>
<p class="indent">一般的に、これら昆虫の細菌共生系は高度に発達しています。その特徴を列挙すれば...</p>
<ul>
	<li>1. 宿主昆虫は共生細菌を保持するための特殊な器官(消化管に発達した袋状組織など)、時には特殊な細胞を発達させ、その内部に共生細菌を局在させている</li>
	<li>2. 共生細菌は1種ないし2種など、少数精鋭である</li>
	<li>3. 卵への共生細菌の感染(卵感染)などの方法で、母虫から子虫へ共生細菌が直接受け渡される</li>
	<li>4. 宿主昆虫と共生細菌は絶対的な相互依存関係にあり、宿主は共生細菌無しでは成長・生存できず、共生細菌は宿主体外で培養できない</li>
	<li>5. ゆえに彼らは運命共同体であり、宿主昆虫と共生細菌の系統分岐パターンは完全に一致することから、これまで共進化・共種分化してきたことが伺える</li>
</ul>
<p class="no-indent">などがあげられます。私達の腸内細菌のように、今日と昨日で種組成が変わってしまうようなものとは大違いです。</p>
<p class="indent">多くが吸汁性として知られる陸生カメムシもよく発達した細菌共生系を持つ昆虫グループの一つであり、中腸後部に袋状組織(これを"盲嚢"と呼びます)を発達させ、その内腔中に共生細菌をぎっしりと詰め込んでいます(マルカメムシのコラムも参照)。サシガメのような捕食性種には共生細菌が見られない一方、植食性カメムシのほとんどがこれを持つことから、共生細菌はこれらの食事で不足するアミノ酸等窒素分やビタミン類を宿主カメムシに供給していると考えられています。</p>

<h3>ホソヘリカメムシ類の共生バークホルデリア</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig1.php','popup','width=661,height=479,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig1-thumb.jpg" width="240" height="173" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: (A) ホソヘリカメムシ、(B) ホソヘリカメムシの中腸、(C) 盲嚢器官の拡大図、(D) 共生バークホルデリアの透過電子顕微鏡像<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">ここで、話題の中心となるホソヘリカメムシ、またその近縁種であるクモヘリカメムシについて少し紹介しておきましょう。これらカメムシはクモヘリカメムシ科に属し、それぞれダイズと稲の重要害虫として広く知られています。ホソヘリカメムシは茶褐色の細長いカメムシで(図1A)、飛翔時は腹部背面のオレンジ色が現れハチに見紛うばかりです。クモヘリカメムシは頭・胸部が鮮やかな緑色で茶色い翅をもち、やはり細長い形態をしています。</p>
<p class="indent">これらホソヘリカメムシ類は、多くのカメムシと同じように中腸に多数の盲嚢を発達させ(図1B,C)、その内部に共生細菌を持っています(図1D)。これら共生細菌を電子顕微鏡観察および分子系統学的手法で同定したところ、ベータプロテオバクテリア亜綱の土壌細菌であるバークホルデリア(<i>Burkholderia</i>)属に含まれることが明らかになりました。</p>

<h3>共進化していない!?</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig2.pdf" target="_blank"><img alt="kikuchi_fig2thum.jpg" src="http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig2thum.jpg" width="240" height="317" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: 共生バークホルデリア(青: ホソヘリカメムシ由来、緑: クモヘリカメムシ由来)の系統解析結果<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">ホソヘリカメムシ、クモヘリカメムシを日本各地11地点から採集し、それぞれ地域個体について共生細菌(共生バークホルデリア)の16S rRNA遺伝子配列を決定し分子系統解析を行ってみました。すると、これら地域個体由来の共生細菌はバークホルデリア属内で大きくひとまとまりになる一方、その中でホソヘリカメムシとクモヘリカメムシそれぞれの宿主種に対応してまとまることはなく、その系統関係はまったくばらばらになっていました(図2)。これは一般的な昆虫−細菌間共生系に見られる共進化・共種分化のパターンとは大きく異なっています。つまり、これらカメムシにおいては、種間で高頻度に共生バークホルデリアの入れ替え(水平伝播)が起きているのではないかと推察されます。これらのカメムシではいったい何が起きているのでしょう？</p>

<h3>共生細菌を環境中から獲得!?</h3>
<p class="indent">この謎を解明するには、ホソヘリカメムシ類における共生細菌の伝達方法の解明が必須です。昆虫における子供への共生細菌の伝達方法には、卵に直接共生細菌を受け渡す「卵感染」と、孵化してから親の糞を食べることで共生細菌を獲得する「糞食」と呼ばれる方法などが知られています(特殊な例として、マルカメムシのようなカプセル伝達もあります)。ホソヘリカメムシについて、電子顕微鏡等による卵表面・卵内観察、および孵化若虫の親との飼育・観察を行ったところ、このカメムシはそれまで昆虫で報告されていたいずれの方法でも共生細菌を伝達していないことが示されました。さらに観察を続けたところ、どうやらホソヘリカメムシは共生細菌の母子間伝達自体を全く行っていないことが明らかになってきました。</p>
<p class="indent">一方で、ホソヘリカメムシの寄主であるダイズの根圏土壌を調査したところ、この共生バークホルデリアが高頻度で検出されました。さらに驚くべきことに、ダイズ苗上で孵化若虫のみで飼育をしたところ、ほぼ全ての個体が共生バークホルデリアを獲得したのです。これらの結果を総合すると、ホソヘリカメムシは共生細菌を垂直伝播させることなく、世代ごとに環境中から獲得していると結論できます。ホソヘリカメムシ、クモヘリカメムシ地域個体にみられた共生細菌の複雑な系統パターンは、これらの種が外部環境中から共生バークホルデリア株をランダムに獲得していると考えれば説明がつくわけです。</p>

<h3>共生細菌がいると体が大きくなる</h3>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig3.pdf" target="_blank"><img alt="kikuchi_fig2thum.jpg" src="http://column.odokon.org/archives/kikuchi_fig3thum.jpg" width="240" height="282" /></a>
	<p class="no-indent">
		図3: 共生細菌感染・非感染個体の乾燥重量比較(Bu-: 共生バークホルデリアなし、Bu+: 共生バークホルデリアあり)<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div><p class="indent">環境中にも生息している、ということからも想像できるように共生バークホルデリアは単離培養することが可能です。ホソヘリカメムシの盲嚢組織を取り出し、内容物を寒天培地に塗布することで、容易に単離培養共生バークホルデリアを得ることができます。これを用いて共生細菌を"与える"・"与えない"という処理を施したホソヘリカメムシ若虫を飼育し、生存率や羽化成虫の体サイズ・乾燥重量を比較しました。その結果、2処理間で生存率に違いはみられなかったものの、体サイズは共生バークホルデリアを与えた(共生細菌あり)処理区個体の方が与えなかった(共生細菌なし)処理区個体に比べ有意に大きく、さらに乾燥重量では2倍近く大きくなることが明らかとなりました。共生バークホルデリアの具体的な機能はまだ分かっていませんが、これらの結果は共生細菌がホソヘリカメムシの成長に有益であることを示しています。</p>

<h3>おわりに</h3>
<p class="indent">このように、ホソヘリカメムシに見られる細菌共生系は「有用細菌を毎世代環境中から獲得する」というもので、「母子間伝達し、共進化」というそれまで昆虫で報告されてきた共生細菌像とはだいぶ異なっていることが明らかになりました。ホソヘリカメムシは、共生バークホルデリアがいなくても矮小ながら成虫になることができ、子供も残すことができます。このことからも、彼らの"ゆるい"関係が伺い知れ、この点で私達ヒトの腸内細菌共生系と比較的近い共生系である印象を受けます。一方で、環境中から取り込むにもかかわらず他の細菌は全く盲嚢に定着しないことから、ホソヘリカメムシ−共生細菌間で高度な特異性が発達していることは間違いありません。この共生バークホルデリアの特異性を裏打ちしているメカニズムはなんなのか？今後面白いトピックの一つだと考えています。</p>
<p class="indent">ホソヘリカメムシは健康志向(？) −かどうかは本人達に聞いてみないと分かりませんが、より健康に成長するために彼らもプロバイオティクスをしているらしい、そんなお話でした。</p>

<h3>参考文献</h3>
<ul>
	<li>Kikuchi Y., Hosokawa T. and Fukatsu T. (2007) Insect-microbe mutualism without vertical transmission: a stinkbug acquires beneficial gut symbiont from environment every generation. <i>Applied and Environmental Microbiology</i> 73, 4035-4043.</li>
	<li>Kikuchi, Y., Meng X. Y. and Fukatsu, T. (2005) Gut symbiotic bacteria of the genus <i>Burkholderia</i> in the broad-headed bugs, <i>Riptortus clavatus</i> and <i>Leptocorisa chinensis</i> (Heteroptera: Alydidae). <i>Applied and Environmental Microbiology</i> 71, 4308-4316.</li>
	<li>菊池義智 (2005) カメムシ類に見られる多様な細菌共生系. 昆虫と自然 40, 7-10.</li>
	<li>菊池義智 (2004)カメムシ類における共生細菌の多様性. 植物防疫 58, 424-428.</li>
</ul>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>チョウでみられる共生細菌が原因の性転換現象 〜昆虫の性決定メカニズムに迫れるか？〜</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2007/1101_190000.php" />
	<id>tag:column.temp.odokon.org,2007://1.41</id>
	
	<published>2007-11-01T10:00:00Z</published>
	<updated>2008-01-28T10:27:31Z</updated>
	
	<summary>キチョウ(Eurema hecabe)は、シロチョウ科に属しており、その名の通り...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
			<category term="topic" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
	
	
	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">キチョウ(<i>Eurema hecabe</i>)は、シロチョウ科に属しており、その名の通り翅が黄色い小型のチョウである。一見、同じシロチョウ科に属するモンキチョウと似ているが、筆者の多分に主観的な印象を述べさせていただくと、キチョウのほうが格段に上品で可憐である。水辺の近い少し開けた山地や住宅地などで、キチョウがひらひらと舞うように羽ばたいているのを、春から秋にかけて目にしたことがある人は多いと思う。実は、このキチョウは我々の目を和ませてくれるだけでなく、<i>Wolbachia</i>という共生細菌に感染しており、昆虫の性決定や昆虫-微生物間相互作用という、興味深く、しかも重要な問題について取り組む材料を提供してくれているのだ。</p>]]>
		<![CDATA[<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/narita_fig1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/narita_fig1.php','popup','width=817,height=600,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/narita_fig1-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: キチョウとボルバキア。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">普通、本州でキチョウを採集して卵を産ませて育てると、性比は完全な一対一になっている。ところが驚くべきことに、種子島や沖縄島で採集されたキチョウに子どもを産ませると、その子どもがすべてメスという状況がしばしば観察される。この現象は、共生細菌ボルバキア(<i>Wolbachia</i>)がキチョウの遺伝的オスをメスに性転換させていることによって起きているのだ。</p>

<p class="indent">いつ、どうやって共生細菌ボルバキアがオスのキチョウをメスに変えてしまうのだろうか?その手がかりを得ようと、ボルバキア感染によりメスだけが生まれてくるキチョウの系統において、幼虫を抗生物質テトラサイクリン入りの人工飼料で飼育することにより、体内の共生細菌を選択的に抑制、除去することを試みた。</p>

<p class="indent">その結果、これらの羽化したチョウの多くは、興味深いことにオスの形質とメスの形質をあわせもつ間性個体であった(図2;図3)。これは、ボルバキアの感染が抗生物質で抑制されることにより、オスからメスへの性転換の作用が不完全となり、間性個体が生じたのだと思われた。1齢幼虫期から抗生物質処理したときのみならず、4齢幼虫期から抗生物質処理したときにも、間性個体はあらわれた。したがって、遺伝的にオスのチョウを完全に機能的なメスに性転換するには、少なくとも1齢幼虫期から4齢幼虫期にわたってボルバキアが継続的に感染して、宿主に作用し続けることが必要なことが示された。</p>

<div class="figure-left figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/narita_fig2.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/narita_fig2.php','popup','width=817,height=671,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/narita_fig2-thumb.jpg" width="240" height="201" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: (上左)正常なオスの精巣。赤い色素を有する。(上右)正常なメスの卵巣。卵巣小管中に発達過程の卵細胞が並ぶ。(下段)間性個体の生殖巣。卵巣と精巣が共存している。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/narita_fig3.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/narita_fig3.php','popup','width=817,height=775,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/narita_fig3-thumb.jpg" width="240" height="232" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図3: (上右)正常なオスの交尾器、青矢印は交尾弁縁棘というオス特有の構造。(上右)正常なメスの交尾器。赤矢印は肛乳房突起というメス特有の構造。(下段)間性個体の交尾器。交尾弁縁棘と肛乳房突起が共存している。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>

<p class="indent clearfloat">ほとんどの動物では、オスとメスは受精時の染色体構成により遺伝的に決定され、受精卵がオスになるかメスになるかの分化は発生のごく初期段階で起こる。したがって、生殖操作をおこなう共生細菌は、受精卵の初期発生の段階で性分化の機構になんらかの方法で働きかけ、遺伝的にオスである個体をメスに変えてしまうのだと考えられてきた。今回の発見は、共生細菌による昆虫の性転換機構に関する従来の説に再考をうながすのみならず、性ホルモンの存在が知られていない昆虫類でも後期発生の過程における性転換が可能なことを示唆する知見であり、昆虫の性制御や生殖工学の観点からも注目される。今後、共生細菌が昆虫のオスをメスに性転換する、具体的な分子機構の解明が期待される。</p>

<h3>参考文献</h3>
<ul>
	<li>Hiroki, M., Kato, Y., Kamito, T., Miura, K. (2002) Feminization of genetic males by a symbiotic bacterium in a butterfly, <i>Eurema hecabe</i> (Lepidoptera: Pieridae). <i>Naturwissenschaften</i> 89: 167-170.</li>
	<li>Hiroki, M., Tagami, Y., Miura, K., Kato, Y. (2004) Multiple infection with <i>Wolbachia</i> inducing different reproductive manipulations in the butterfly <i>Eurema hecabe</i>. <i>Proceedings of the Royal Society of London, Biological Sciences, Series B</i> 271: 1751-1755.</li>
	<li>Narita, S., Kageyama, D., Nomura, M., Fukatsu, T. (2007) Unexpected mechanism of symbiont-induced reversal of insect sex: feminizing <i>Wolbachia</i> continuously acts on the butterfly <i>Eurema hecabe</i> during larval development. <i>Applied and Environmental Microbiology</i> 73: 4332-4314.</li>
	<li>Narita, S., Nomura, M., Kageyama, D. (2007) Naturally occurring single and double infection with <i>Wolbachia</i> strains in the butterfly Eurema hecabe: transmission efficiencies and population density dynamics of each <i>Wolbachia</i> strain. <i>FEMS Microbiology Ecology</i> 61: 235-245.</li>
</ul>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>蛾の「雄らしさ」を作るZ染色体</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2007/1101_140000.php" />
	<id>tag:column.temp.odokon.org,2007://1.40</id>
	
	<published>2007-11-01T05:00:00Z</published>
	<updated>2008-01-28T10:23:22Z</updated>
	
	<summary>カイコをはじめとする蛾や蝶の類は、n=30種類ほどの染色体を持っており、そのうち...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
			<category term="column_main" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
	
	
	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">カイコをはじめとする蛾や蝶の類は、n=30種類ほどの染色体を持っており、そのうち1つがZ染色体です。Z染色体は、雄では細胞あたり2本、雌では1本存在します。このZ染色体の上に存在する遺伝子は、他の染色体(常染色体)とは異なり、神経や筋肉で働く遺伝子が多いことが分かっています。蛾類の行動は雌雄で大きく異なっていますが、その性差にはZ染色体の機能が関与している可能性があります。</p>]]>
		<![CDATA[<p class="indent">昆虫は、私たちヒトと同じように雌雄異体であり、雌と雄が別々の個体として分化しています。昆虫の雌雄は、遺伝子のみで決定されます。多くの昆虫は、性染色体を持っており、そこに性決定で重要な役割を果たす遺伝子が存在しています。昆虫の性染色体は、雌XX-雄XY、雌XX-雄XO、雌ZW-雄ZZ、雌ZO-雄ZZの4通りの型があります。</p>

<p class="indent">多くの蛾類がそうであるように、カイコの性染色体構成は、雌ZW-雄ZZです。雌のカイコのみが有するW染色体上には、雌を決定する重要な遺伝子<i>Fem</i>が存在します。しかし、W染色体には、<i>Fem</i>以外の機能遺伝子はまだ一つも知られていません。一方、Z染色体は細胞当たり雌で1本、雄では2本存在します。カイコのゲノム(染色体数n=28)には約20,000個のタンパク質コード遺伝子が存在していると言われていますが、そのうちZ染色体には約700個の遺伝子が座乗しています。</p>

<p class="indent">雌XX-雄XY型および雌XX-雄XO型の性染色体をもつ動物では、X染色体において「遺伝子量補正」という現象が起きることが知られています。たとえば、キイロショウジョウバエでは雌の細胞にはX染色体が2本ありますが、雄には1本しかありません。そのX染色体には2450個の遺伝子がありますが、個々の遺伝子がそのまま機能を発現すると、どの遺伝子でも雌のほうが2倍の量の働きが現れることになります。しかし、実際には雄のX染色体上にはMSL複合体と呼ばれる雄特異的な装置が出現し、その結果X染色体の立体構造が変化して遺伝子1個あたりの働きが倍増し、結果的に細胞当たり雌と同等の遺伝子産物が生じます。これは遺伝子量補正の典型的な例です。</p>

<p class="indent">カイコに遺伝子量補正が存在するか否か、古くから議論になってきました。私たちの研究室は、Z染色体上の多数の遺伝子に由来するメッセンジャーRNA(mRNA)を正確に定量することにより、遺伝子量補正が行われていないことを示しました。Z染色体上の約700個の遺伝子のうち、一部の遺伝子では細胞当たりの雌雄の働きがほぼ等しくなっていますが、多くの遺伝子では雄のもつ2個の遺伝子がそのまま発現し、2倍のmRNA量を生じています。なぜ、カイコには遺伝子量補正が無いのでしょうか。</p>

<p class="indent">ショウジョウバエの遺伝子量補正には、5種類のタンパク質と2種類の非コードRNAが構成する複合体が必要です。しかし、それらをコードする7個の遺伝子のうち、カイコに対応する遺伝子があるのは3個だけです。これではショウジョウバエと同じような機構でZ染色体の量補正を実行することは困難でしょう。</p>

<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shimada-t_fig1k.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/shimada-t_fig1k.php','popup','width=458,height=458,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/shimada-t_fig1k-thumb.jpg" width="240" height="249" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: Z染色体38.7に座位する<i>Vg</i>遺伝子のヘテロ接合の雄成虫(左と下)。正常(右上)に比べて翅の形成が顕著に阻害されている。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div><p class="indent">一般的に、遺伝子は各染色体に偏りなく分布しています。カイコでも性染色体以外の染色体(常染色体)を相互に比較しても、遺伝子の機能に関わる特徴はほとんどありません。しかし、Z染色体だけに関しては、明らかに特別な機能をもつ遺伝子が多く存在しています。特に神経や筋肉の機能に関わる遺伝子が多く存在します。</p>

<p class="indent">たとえば成虫の翅を動かす筋肉である間接飛翔筋の構成成分です。ショウジョウバエでは、24種類のタンパク質が間接飛翔筋の筋繊維を構成していますが、それらに相当するカイコのタンパク質のうち1/3に相当する8個はZ染色体の遺伝子にコードされています。また、概日時計の構成要素の遺伝子も同様です。昆虫の概日時計は主として4個の遺伝子がフィードバックループを構成して24時間の生体リズムを作り出しています。その4個の遺伝子のうち、3個がカイコではZ染色体に座乗しています。カイコをはじめとする蛾類では、通常、雄成虫の行動が雌よりも活発です。雌はフェロモンを使って雄をおびき寄せることによって、無駄に行動してエネルギーを消耗することなく生殖に成功します。雄は必死に雌を探索して飛び回るため、飛翔などの行動に関する能力が優れています。また、雄は雌よりも早い時刻に羽化する場合が多いのですが、このような概日リズムのズレは、羽化当日から交尾能力を持つ蛾類にとっては、雄が雌を獲得するために有利に働くと考えられます。また、カイコの雌性フェロモンであるボンビコールの受容体は、雄の触角でのみ発現しますが、これをコードする遺伝子はZ染色体に乗っていることが知られています。これら成虫の行動に関わる遺伝子がZ染色体上に存在することは、それら遺伝子が雌よりも雄で多く発現している理由のひとつだと思われます。</p>

<p class="indent">蛾類は、飛翔に関わる遺伝子や時計を支配する遺伝子など、雄で多く発現することが望ましい遺伝子をZ染色体に集め、かつ遺伝子量補正を放棄することによって、Z染色体は雄の機能を支える染色体としての役割を果たすように進化してきたのではないか、と私たちは考えています。太古の昔、Z染色体の祖先の染色体には、常染色体と同じような遺伝子が乗っていたでしょう。ひとたびZ染色体が性染色体へ分化しはじめると、多くの遺伝子が雌雄の量的差異を嫌って常染色体へ転座してゆき、同時に、雄で多く発現することが望ましい遺伝子が、常染色体から少しずつZ染色体へ移ってきた。私たちは今その進化の結果をカイコのZ染色体に見ているのではないかと思っています。</p>


<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/shimada-t_fig2k.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/shimada-t_fig2k.php','popup','width=458,height=203,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/shimada-t_fig2k-thumb.jpg" width="240" height="110" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: Z染色体49.6に座位する<i>od</i>遺伝子のホモ接合の幼虫(上)。皮膚に尿酸が蓄積できないため透明に見える。私たちはすでに原因遺伝子の候補を発見した。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">カイコには100年を超える遺伝学の歴史があり、多くの突然変異が発見されています。Z染色体には、行動や翅形成に関わる突然変異形質がいくつかマッピングされています。たとえば、幼虫の筋力が低下しかつ成虫のフェロモン応答が弱くなる<i>spli</i>という変異があります。最近、私たちは変異体を利用して<i>spli</i>の候補遺伝子をクローニングしました。また、翅の形成が不完全になる痕跡翅(Vg)の原因が、Z染色体の部分欠損であることを明らかにしました。Z染色体には、他にも休眠性を支配する<i>Lm</i>や食性の変異の原因になる<i>Bt</i>など、昆虫の高次機能に関わる興味深い形質遺伝子が多く座乗しています。これらの遺伝子をクローニングし、その分子機能を明らかにすることができれば、雄と雌におけるZ染色体の役割がさらに明確になると考えています。</p>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>昆虫を扱う職業: ある昆虫担当学芸員の話</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2007/1101_000000.php" />
	<id>tag:column.temp.odokon.org,2007://1.39</id>
	
	<published>2007-10-31T15:00:00Z</published>
	<updated>2008-07-11T06:25:41Z</updated>
	
	<summary>博物館などで研究や展示などの専門的な仕事をする人がいます。主に学芸員と呼ばれてい...</summary>
	<author>
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	</author>
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	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">博物館などで研究や展示などの専門的な仕事をする人がいます。主に学芸員と呼ばれている職種の人たちで、昆虫を扱っている博物館には昆虫担当の学芸員がいます。私がこの職業を知ったのは高校2年生の時のことです。隣町にある倉敷市立自然史博物館を訪れて、たくさんの昆虫標本の展示を見たり、昆虫担当の先生のお話を聞いたりしているうちに、昆虫が好きだった私は、「昆虫に囲まれて仕事ができるなんて素敵な職業だなあ」とあこがれのようなものを感じていました。そして、6年後、奇遇にも私はその倉敷市立自然史博物館で昆虫担当の学芸員として働くことになったのです。それまでのいきさつと博物館での仕事の概要をご紹介させていただきます。</p>]]>
		<![CDATA[<h3>学生のころ</h3>
<p class="indent">高校生のころまでの私は、カブトムシ・クワガタムシをはじめ、ヘビ、カメ、ヤモリ、カナヘビ、ナマズなどありとあらゆる生き物を捕まえて来ては飼っていました。動物が全部好きだったので、大学選びは生物系の理学・農学・水産学・獣医学関係を考えていました。目標を昆虫学研究室のある農学部に絞ったのは、自然史博物館に行ってみて「やっぱり昆虫が一番好き」と感じたからです。あらゆる動物の中でもそれまでにもっとも触れ合った時間が長かったことも理由のひとつだと思います(農学部以外の学部に昆虫を扱う研究室がある大学もあります)。</p>
<p class="indent">希望していた東京農業大学に合格することができた私は、入学式の後、さっそく昆虫学研究室を訪ねてみました。簡単な面接の後、先生が研究室や標本室を案内してくださいました。巨大なコーカサスオオカブトムシが張り付けにされて乾燥中で、先輩方がマレーシアへ行って採って来たと伺って度肝を抜かれたのを覚えています。本でしか見たことがなかった外国のカブトムシ(当時はペットとしての輸入はできなかった)を自分で採りに行くなんて、それまでは夢のまた夢でしたから。</p>
<p class="indent">研究室では、週に1?2回、昆虫学のゼミに参加していましたが、それ以外の時間でも採集旅行や個別にテーマを決めて行う卒業研究などで研究室の先生方や先輩方からは語りつくせないほどの知識をいただきました。特に虫好き同士で出かける採集旅行は私にとって刺激的なものでした。学生時代に国内は北海道から沖縄まで、海外は東南アジアのいくつかの国へ長期休暇を利用して出かけた経験は、昆虫の分類や生態に関してだけでなく、旅先の文化や人とのコミュニケーションに関することなど実にさまざまな知識を与えてくれました。また、同じ研究室で学んだ仲間の多くは今でも連絡を取り合っており、仕事上のことで助けてもらうことも数多くあります。</p>
<p class="indent">学芸員希望でこれから大学(または大学院)選びを考えている方は、特に次のような点について調べておくとよいでしょう。ひとつは、昆虫を扱う博物館で最も求められている昆虫分類学が得意な先生、先輩方が研究室にいらっしゃること、もうひとつは、博物館で専門的な仕事をする人の国家資格である学芸員資格を取得できるコースが大学にあることです。大学以外で学芸員資格を取得するためには国家試験を受けるなどの方法がありますが、難関のようです(学芸員資格については取得方法など、将来変更されるかもしれません)。</p>

<h3>学芸員の採用試験</h3>
<p class="indent">私にとって、最大の幸運は就職探しをしているときに昆虫担当の学芸員の募集があったことです。自分の専門分野が活かせる学芸員の募集が自分の求職中にあれば幸運ですが、残念ながらこの世界での求人数は決して多いとは言えません。例えば、私の勤務する博物館では昆虫担当の学芸員の定数は今のところ1名だけですから、このままの状況で博物館が存続するとして、次に昆虫担当の学芸員募集があるのは、今年38歳になる私が退職する予定の22年後です。それでも大学の研究室に送られてくる募集案内や各施設のウェブサイト、各種メーリングリストなどで情報を収集すれば、国内でもわずかながら昆虫担当学芸員の募集を見つけることができるでしょう。自分でできる大切なことは、広い情報網を張って、いつどこで募集があっても応募できるように受験の準備を整えておくことです。</p>
<p class="indent">一般的には公立博物館の場合は、採用試験(一般的な公務員試験と専門分野に関する試験)にパスして正規職員になりますが、嘱託などの期限付き職員の場合は面接や書類選考だけでなれる場合もあります。私の場合は最初の1年間は嘱託として勤務し、その間に採用試験を受けて、その結果、翌年から正規職員となりました。受験資格は各館で異なり、学芸員資格を必ずしも要しない場合もあります。修士号や博士号を持っていることや取得見込みであることが条件にあることもあります。専門の内容では、比較的規模の大きな博物館では昆虫学の中でもさらに特定の専門分野を指定して募集する場合もありますし、規模の小さい地方博物館や教育普及に力を入れている館では、逆に昆虫のみならず、無脊椎動物全般、あるいは動物全般、さらには自然全般に関する知識を要求されることもあります。採用試験の合否決定に当たっては、一般教養と専門分野の学力検査のほか、書類審査や面接が重視されます。博物館の目的にあった研究活動ができる人材であるか、野外調査などの経験は十分か、展示・行事や博物館運営などに関する企画力・行動力があるか、人前で話すことや接客が得意であるか、などが評価されます。</p>

<h3>昆虫担当学芸員の仕事 (倉敷市立自然史博物館の場合)</h3>
<p class="indent">学芸員という職種は専門家といっても実にさまざまな仕事内容をこなしていますし、また、同じ昆虫担当でも各館の事情によって仕事内容は少しずつ違っています。ここでは私が勤務する博物館でのことを中心にご紹介させていただきます。</p>
<h4>(1) 資料の収集・保管</h4>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/okushima_fig1.php','popup','width=1024,height=768,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig1-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: 収蔵庫に保管されている整理された昆虫標本<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">個人でも自分の趣味または研究のために昆虫標本を集めている方は大勢いますが、博物館での標本収集は自分のためではなく、その博物館を利用する大勢の方々のために行われます。よって、担当学芸員が好きな分類群ばかりを集めていたのではいけません。当館の場合は、岡山県内で唯一の自然史博物館として、特に県内を中心とした地域から、できるだけ広い分類群を対象として積極的に収集するよう心がけています。さらに生物相の比較研究のためや利用者の教養を高めるため、近隣県、日本全国、さらには世界各地から集められた標本を収集保管しています。また、好きなものばかりを集めていたのではダメ、と書きましたが、担当学芸員の得意な分類群に力を入れるのも大切なことです。このことは次の項で説明します。</p>
<p class="indent">標本収集の方法は、大部分が個人からの寄贈によるもので、残りが館員の仕事時間内での採集によるものです(時間外にプライベートで採集したものは寄贈扱い)。当館では購入や交換による受け入れ標本はごくわずかです。</p>
<p class="indent">受け入れが決まった昆虫標本は、資料受け入れ手続きの後、同定、登録、紹介展示という一連の流れを経て、標本専用の収蔵庫の各分類群の所定の場所に整理されて保管されます。登録された標本は個別の番号が記された当館の収蔵品であることを示す館蔵ラベルが1個体ずつに付けられ、同時に種名や採集データなどがコンピュータに入力されてデータベース管理されます。</p>
<p class="indent">現在、倉敷市立自然史博物館には約30万点の昆虫標本が保管されています。これらの標本はこのあと説明する研究や展示、教育普及活動に活用されると同時に、未来へ引き継ぐ人類全体の学術的財産として大切に保管されています(図1)。</p>
<p class="indent">標本類のほか、図書・雑誌などの文献類や写真なども研究や展示・教育普及を行う上で必要ですので、博物館資料として収集しています。</p>
<h4>(2) 調査・研究</h4>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig2.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/okushima_fig2.php','popup','width=1085,height=1600,scrollbars=yes,resizable=yes,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig2-thumb.jpg" width="240" height="359" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: 著者が新種記載した台湾のジョウカイ(甲虫) <i>Lycocerus satoi</i> Okushima, 2007<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">博物館に就職を希望する方の多くは仕事として研究をしたいという夢があるようです。私もその一人でした。しかし、各博物館にはそれぞれの使命があり、何でも自由に研究できるわけではありません。</p>
<p class="indent">当館では、資料収集に対する理念と同様、調査・研究事業でも岡山県を主な対象地域としており、岡山県内における現地調査や分布記録の整理に特に力を入れています。</p>
<p class="indent">一方、分野別個人研究では、私の担当する昆虫分野としては学生時代から手がけてきた「ジョウカイボン科の分類学的研究」を博物館に着任してからもずっと継続しています(図2)。かつては、「地方博物館が全国レベル、世界レベルの研究をする必要はない」という意見もありましたが、では、国立のあるいは国際的な研究機関にすべての分類群に対応できる研究者が十分に配置されているかというとそうではないのです。学芸員は地方で求められる研究に加えて、学界に貢献できる専門分野での資料収集と研究をも行うのが理想的です。実際、私の場合はジョウカイボン科に関する依頼(標本同定・文献調査など)については、日本全国のみならず国外の博物館や大学関係者からの依頼にも可能な範囲で対応しています。その代わり、自分の専門以外の分類群については、必要な場合にはほかの博物館などの研究者にお願いして調べていただくことがあります。持ちつ持たれつというわけです。</p>
<h4>(3) 展示</h4>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig3.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/okushima_fig3.php','popup','width=1024,height=768,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig3-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図3: リニューアルされた昆虫の展示室<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">昆虫館と博物館の大きな違いは展示物にあります。前者は生きているものが中心ですが、後者は標本が中心です。おそらく多くの方が博物館の顔として認識している業務でしょう。常設展示には各館の個性が出ます。基本的には、資料の収集や調査・研究を踏まえた結果を展示公表する場ですから、それぞれの地域性を表す展示が多かれ少なかれあります。当館では平成16年に昆虫の展示室を全面リニューアルしました。分類展示として岡山県内に生息する昆虫を約4,000種類紹介したほか、より多くの方に昆虫に興味を持っていただけるよう、世界64か国から収集されたコレクションを活用して昆虫の多様性を表現しています(図3)。展示更新の苦労と裏話は奥島(2004a, b)に解説しています。</p>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig4.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/okushima_fig4.php','popup','width=1024,height=768,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig4-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図4: 自作したトリケラトプスの実物大頭骨模型<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">当館では、常設展示のほかに年数回の特別陳列や特別展を開催しています。昆虫関係では、収蔵庫内の標本を紹介する「収蔵資料展」、虫好きの子どもたちによる「むしむし探検隊報告」(「むしむし探検隊」については後述)、キリギリス・コオロギの生態展示をする「秋の鳴く虫展」が毎年恒例となっています。平成18年の夏には、特別展「体感! 恐竜ワールド」を開催し、好評を得ましたが、当館には恐竜担当の学芸員はいませんので、昆虫担当であってもこのような場合には協力して展示を作り上げます。私は工作が好き、という理由だけで恐竜の実物大頭骨模型を作成しました(図4)。</p>
<h4 class="clearfloat">(4) 教育普及</h4>
<div class="figure-right figure-240px clearfloat">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig5.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/okushima_fig5.php','popup','width=1024,height=768,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig5-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図5: 自然観察会「ちっちゃな甲虫の世界」の様子<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">人員規模の大きい博物館では教育普及活動専門の職員を配置している館もありますが、多くの博物館では同じ学芸員が担当します。主な行事としては、自然観察会や講座があります。</p>
<p class="indent">当館では昆虫関係の観察会を年間5回開催しています(図5)。各観察会の準備としては、まず、最初の現地下見では企画担当者が、交通の便、危険箇所のチェックや歩くコースの設定、立ち入りの許可申請などを調べて開催場所を決定し、参加者募集案内を出します。2回目の下見を開催日より1?2週間前に行い、当日の講師が中心となって当日見られそうな昆虫や観察のポイントをチェックします。そして本番では講師のほか、受付、進行、誘導案内、救急、写真記録などの係員が必要ですが、当館の場合はこれらの役割は博物館友の会の方が中心となって分担してくださっています。ですから、1回の観察会を開催するために担当者は最低3回現地を訪れることになります。いつも最も苦労するのは場所の選定で、目的である昆虫の観察に適しているかどうかに加えて、公共の交通機関があるか、あるいは参加者の駐車場が確保できるかなどが問題となります。さらに、昆虫の場合は基本的には採集して観察し、持ち帰って飼育や標本作成することも奨励していますので、法律などで採集が規制されていないことなども開催場所の条件となります。</p>
<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig6.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/okushima_fig6.php','popup','width=1024,height=768,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/okushima_fig6-thumb.jpg" width="240" height="180" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図6: 博物館講座「昆虫の採集方法と標本の作り方」の様子<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">博物館内で開催する昆虫関係の講座では夏休みの「昆虫の採集方法と標本の作り方」(図6)が大人気で毎年定員60名の講義室がほぼ満員になります。もうひとつ、「学芸員研究発表会」という講座では、博物館の調査・研究事業として学芸員が行っていることを一般の方にわかりやすく解説します。そのほかにも、特に昆虫好きの子どもたちだけを集めて学芸員と同じように調査・研究から展示・発表までを体験させる「むしむし探検隊」(事業の詳細は奥島(2005)を参照)や夏休み恒例の「標本の名前を調べる会」、館内でさまざまなイベントを行う「自然史博物館まつり」などの人気行事を開催しています。</p>
<p class="indent">学芸員の教育普及活動は、博物館が企画・主催する行事だけではありません。館外の団体から観察会や講座の講師を依頼されることもありますし、大学生の博物館実習や中学生の職場体験などの指導も行います。さらに個人あるいはグループでの質問にお答えしたり、マスコミからの問い合わせに対応したりするレファレンス業務(昆虫分野で年間約400件ある)や、来館者に配布する読み物や新聞・雑誌等へ掲載する解説文の執筆業務なども教育普及活動の一環と捉えています。</p>
<h4>(5) 庶務・その他</h4>
<p class="indent">以上が専門性を特に要求される仕事内容ですが、学芸員にはほかにも実に雑多な業務が課せられます。皮肉っぽく「雑芸員」と呼ばれるゆえんですね。</p>
<p class="indent">当館の場合、組織上は市の教育委員会に属するひとつの課の扱いとなっています。ですから、専門の学芸業務のほかに、予算関係・経理事務や他課との連絡・協力、文書処理など市役所が行う一般的な事務業務もほかの課と同様に行っています。そのほかにも、展示や行事の案内を行う広報業務や、図書・雑誌の登録管理、博物館友の会の事務局として、会員の管理(入会・退会・変更の受付)、会計の管理、雑誌の編集や会議への出席なども学芸員が中心となって分担しています。実際にはこのような大量の庶務業務を優先的にこなさないといけない場合が多く、個人で計画している調査・研究にかかる時間を確保しにくいのが現状です。</p>
<p class="indent">以上、大きく分けて五つの仕事内容をご紹介しましたが、これらの仕事は実際にははっきりと区別することはできず、お互いが深い繋がりを持って博物館事業が成り立っています。野外調査や寄贈によって収集された資料をもとに調査研究を行い、その成果を展示や教育普及に反映させて利用者の方々に情報提供しているのです。ですから、ひとりひとりの学芸員の仕事内容は非常に多岐に渡り、仕事量も多くなるわけですが、一方、これらの一連の博物館業務を同じ担当者が行っているからこそ、各館独自の研究成果を反映した展示や教育普及事業がいち早く実施され、利用者はその内容について直接研究者に尋ねることができるメリットがあります。</p>

<h3>学芸員になる人の条件と適性</h3>
<p class="indent">まず、専門の仕事が好きで楽しく積極的にできることが必須条件であると思います。そして、専門分野の仕事はもちろんのこと、それ以外のことも速やかにこなす能力が望まれます。なぜなら、専門外の義務的な仕事に時間をとられていては、自主的に行う研究などは後回しになってする時間がなくなってしまうからです。また、万人に受け入れられるような展示をプロデュースする美的センスや人前で話をする際のユーモアも大切です。昆虫担当の場合は特に子どもたちと触れ合う機会が多く、専門的な内容の話をわかりやすく説明するテクニックも求められます。</p>
<p class="indent">このように書くと学芸員はとても優秀な人でないとなれないと思われるかもしれませんが、私自身は決してこのような素質を十分備えているとはとうてい言えません。未だに苦労の連続で、学生のころ、もっと幅広く勉強しておけばよかったなあと後悔しつつ、大勢の方に助けてもらって仕事をこなしています。</p>

<h3>引用文献</h3>
<ul>
	<li>奥島雄一 (2004a) 新「昆虫の世界」展示解説詳細版(1). しぜんしくらしき(49): 15-18.</li>
	<li>奥島雄一 (2004b) 新「昆虫の世界」展示解説詳細版(2). しぜんしくらしき(50): 7-12.</li>
	<li>奥島雄一 (2005)「むしむし探検隊」実践報告書. 平成16年度 野依科学奨励賞 小論文･実践報告書集 pp.264-284. 国立科学博物館, 東京.</li>
</ul>
<p class="no-indent">※ 引用文献のコピーをご希望の方は著者までご連絡下さい。</p>]]>
	</content>
</entry>
<entry>
	<title>マルカメムシの共生細菌カプセル</title>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="http://column.odokon.org/archives/2007/0802_171507.php" />
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	<published>2007-08-02T08:15:07Z</published>
	<updated>2008-07-11T06:28:48Z</updated>
	
	<summary>マルカメムシは空き地などにはえているクズの茎にものすごい数でついている虫です。洗...</summary>
	<author>
		<name></name>
		
	</author>
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	<content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://column.odokon.org/">
		<![CDATA[<p class="indent">マルカメムシは空き地などにはえているクズの茎にものすごい数でついている虫です。洗濯物にもよくついている虫です。また、手ではたくとすごく臭い匂いを出す虫です。マルカメムシという名を聞いたことがない読者の方でもここまで読んで、あれのことか、と思われたのではないでしょうか。極めて普通種で身近な虫なのですが、実は多くの読者の方がまだ聞いたことがないであろう非常におもしろい現象が見られます。</p>]]>
		<![CDATA[<div class="figure-right figure-240px">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-1.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-1.php','popup','width=591,height=566,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-1-thumb.jpg" width="240" height="229" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図1: マルカメムシの卵塊の表側(上)と裏側(下)。矢印はカプセルを指している。スケールバーは1mm。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">繁殖期である5?6月にクズの芽先を探すとマルカメムシの卵塊(図1上)は簡単に見つかります。この卵塊を丁寧に植物体から剥がして裏側を見ると、黒っぽい色をした小さな粒がいくつか付着していることに気がつきます(図1下)。この粒は“カプセル"と呼ばれており、メス親が産卵の際に卵とともに産みつけるものです。カプセルの中には何が入っているのでしょうか？。メス親は何のためにカプセルを産むのでしょうか？。以下では筆者らによる最近の研究を紹介してこれらの問いに答えます。</p>
<div class="figure-right figure-240px clearfloat">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-2.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-2.php','popup','width=591,height=490,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-2-thumb.jpg" width="240" height="198" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図2: カプセルを吸うマルカメムシの孵化幼虫。写真の卵塊では観察しやすくするために手前側の卵を取り除いてある。スケールバーは1mm。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">マルカメムシ類の卵塊は産卵後6?7日目に一斉に孵化します。幼虫は孵化後しばらくはじっとしていますが、数分経って体が固まってくると激しく動き出します。実体顕微鏡下で詳しく行動を観察してみると、口吻(ストロー状の口器)を卵の隙間に差し込んで何やら探っているような動きをしています。図1からもわかるように、卵の隙間にはカプセルがあります。幼虫は卵の隙間を探っている間は激しく動きますが、ひとたび口吻の先がカプセルに刺さるとぴたりと動きをとめてカプセルを吸い始めます(図2)。筆者の主観を多分に含む表現になりますが、孵化幼虫はかなり必死にカプセルを探しているように見えます。もしカプセルを吸えないとどうなるのでしょう？</p>
<div class="figure-right figure-240px clearfloat">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-3.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-3.php','popup','width=591,height=1151,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-3-thumb.jpg" width="240" height="467" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図3: マルカメムシの成虫。カプセルを吸わせて育てた個体(上)と吸わせずに育てた個体(下)。スケールバーは1mm。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
</div>
<p class="indent">ピンセットを使って孵化前の卵塊からカプセルをすべて取り除いてしまうことで、カプセルをまったく吸っていない幼虫を得ることができます。このような幼虫に十分な餌を与えてその後の成長を調べたところ、カプセルを吸った幼虫に比べて成長が著しく悪いことがわかりました。具体的には、半数以上の個体が幼虫期に死亡し、成虫まで生存する個体も成長遅延、矮化、体色異常などが見られ(図3)、繁殖前に死んでしまいます。つまりマルカメムシが正常に成長・繁殖するには、孵化後にカプセルを吸っておくことが絶対的に必要なのです。</p>
<p class="indent">ではカプセルの中には何が入っているのでしょうか?。カプセルの切片を電子顕微鏡で観察したところ、細菌と思われる像が見られました(図4)。この細菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列を調べたところ、大腸菌に近縁なガンマプロテオバクテリアの一種であることがわかりました。ところで陸生カメムシ類の多くが中腸の盲嚢内に共生細菌を保持していることが古くから知られています。そこでマルカメムシの腸内にいる共生細菌の遺伝子塩基配列を調べたところ、カプセル内に存在していた細菌と同一の塩基配列が得られました。つまりカプセルの中身はメス親の腸内にいた共生細菌だったということです。</p>
<p class="indent">幼虫は孵化後にカプセルを吸うことで共生細菌を体内に取り込んでいることが予想されますが、これを確認するためにカプセルを吸わせた幼虫と吸わせなかった幼虫について体内に共生細菌が存在するかどうかを調べました。結果は予想通り、カプセルを吸わせた幼虫はすべて体内に共生細菌を保持しており、カプセルを吸わせなかった幼虫の体内からは共生細菌は検出されませんでした。これらの結果から、マルカメムシのメス親は自分の持つ腸内共生細菌を子に伝えるためにカプセルを産んでいると考えられます。</p>
<div class="figure-right figure-240px clearfloat">
	<a href="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-4.php" onclick="window.open('http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-4.php','popup','width=591,height=455,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://column.odokon.org/archives/hosokawa1-4-thumb.jpg" width="240" height="184" alt="" /></a>
	<p class="no-indent">
		図4: マルカメムシのカプセル切片の電子顕微鏡像。スケールバーは1um。*は共生細菌の細胞を示す。<br />
		(クリックで拡大します)
	</p>
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<p class="indent">マルカメムシの正常な成長・繁殖には腸内共生細菌が必須、ということになるのですが、共生細菌が具体的にどのような生物的機能を持っているのかはまだ解明されていません。マルカメムシのエサである植物師管液は含有栄養素が偏っているため、不足しているアミノ酸やビタミン類を共生細菌が合成し宿主カメムシに供給していると考えていますが、これを確かめるにはさらに詳細な実験をおこなう必要があります。</p>
<p class="indent">今回はマルカメムシ<i>Megacopta punctatissima</i>を例にして書きましたが、日本産の他のマルカメムシ類(タデマルカメムシ<i>Coptosoma parvipictum</i>やツヤマルカメムシ<i>Brachyplatys subaeneus</i>など)においてもほぼ同様の現象が見られることを確認しています。マルカメムシ類と腸内細菌の共生系の研究上もっとも魅力的な点は、宿主カメムシの系統間で共生細菌の置換えができることです。たとえば、マルカメムシの幼虫にタデマルカメムシのカプセルを吸わせたらどうなるのでしょう?。非常に興味深いところですが、それらはまだ研究を進めている最中です。</p>
<p class="indent">ここでの内容について、さらに詳しく知りたい方は以下の文献をご参照ください。</p>
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	<li>Fukatsu, T., Hosokawa, T. (2002) Capsule-transmitted gut symbiotic bacterium of the Japanese common plataspid stinkbug, <i>Megacopta punctatissima</i>. <i>Applied and Environmental Microbi