2007年03月27日掲載 【昆虫と人間の違いは?】

昆虫と人間で、いちばん違う点は何なんでしょう?

昆虫は小さくて、ヒトは大きい、というのもひとつの回答です。サイズの大小がその生物学的な特徴を決めてしまっていることも多く、だから、人間は大きいために長生きで、昆虫は小さいために短命で、1年に何回も世代をくり返すものもいる、と言ってもいいですから。でも、ヒトを含む霊長類のご先祖様は、「食虫類」といって、トガリネズミのように小さな生き物でした。一方、化石昆虫のなかには開帳60cmを超えるお化けトンボもいました。サイズの大小は、決定的な違いではありません。

ヒトと昆虫が、進化のどの段階で分かれてしまったかと考えると、生物としてヒトと昆虫のどこが本質的に違うのかが分かります。カギムシは最近はやりの生き物で、本が何冊か出ていますが、知っていますか? このカギムシも「節足(せっそく)動物」の一種です。節足動物には昆虫やカギムシのほか、エビやカニ、クモ、ダニ、ミジンコも含まれます。絶滅してしまいましたが、三葉虫も節足動物です。こうした節足動物は「体節(たいせつ)動物」の一種で、体節動物のなかにはミミズも入っています。この、かなり大きな分類群である体節動物のもっとも大きな特徴は、体のかたちを決める骨格がいちばん外側にあるということです。一方、ヒトはほ乳類に属し、ほ乳類は脊椎(せきつい)動物に属しています。脊椎とは体の中心にある骨のことですから、体のかたちを決める骨格がいちばん内側にあるということですね。

ですから、昆虫図鑑によく書かれているように、「昆虫は外骨格で、ヒトは内骨格」というのは、進化学的にもわかりやすい考えかたです。外骨格だと骨で中身の身体を支えることになりますから、そういう生き物は地上ではあまり重くなれません。逆な言い方をすれば、小さな身体に中身がみっちり詰まった、機能的な生き方を選ばざるをえないことになります。いずれにせよ、あまり大きくなれないということですから、「昆虫は小さくて、ヒトは大きい」というのも、結果的にはかなり正しい観察となります。

また、ヒトと昆虫では足の数もちがいます。体節動物は「体節」という基本構造がくり返し重なった構造をしています。昆虫などの節足動物ではひとつひとつの体節のそれぞれに脚(あし)がついているのが基本です。ムカデやゲジゲジのような生き物が基本形です。昆虫は6本脚であって、ムカデやゲジゲジみたいに脚が多くない、ですって? じつは昆虫では、胸部以外の脚はほかの器官になったり(頭のほうの体節では脚が触角やあごひげになりました)、退化したのです。その証拠に、蝶や蛾の幼虫では脚は6本より多いことがあるでしょう? 成虫は6本脚が基本ですが、例外もあります。蝶のなかでもタテハチョウ類などは前脚が退化してしまっており、ものにつかまる時には4本脚に見えます。陸生ホタルの雌のなかには、幼虫型をしていて、脚を10本以上もつ種もいます。

そのほか、「ヒトの血は赤いが、昆虫の血液は青いものが多い」とか、「ヒトは飛べないが、昆虫は飛べるものが多い」などという答えもありますが、昆虫類はきわめて多様で、例外となるさまざまな種がいますから、採点すれば△というところではないでしょうか。

回答者: 榊原充隆 (東北農研)

« 人面蛾 | Q&A一覧 | カマキリの卵の中は? »